カスパーハウザーという青年が突然ドイツのある村に現れて、言葉も喋れず、字も書けずで、警察が保護して食事など与えて、調べていた。だがどうしてもどこの誰なのか、分からないので、見世物小屋に売り渡してしまう。警察もいつまでもタダメシを食わせておくわけにもいかないということだった。
地下牢に16年ほど暮らしていたということだけがわかったのだった。
見世物小屋の暮らしも厳しいものであった。ダウマー教授が自宅に引き取ることになった。
何人もの役人や識者が、彼の謎を解こうと集まっては去って行く。
彼は教授に懐いて、ゆったりと庭など散策して暮らしていた。
言葉を習い、文字も習い、やっと普通に喋れるようにもなり、ピアノも触った。
だが、「俺はこの世に出てきたことが一番の間違いだったよ」、などと言ったりして、なんかとても意味深である。
庭の草木を可愛がり、タネも撒いた。おとなしいが、世間の人とは違った考え方をしていてなぜか胸を打つのだった。
神のことを教えてやろうと周囲が躍起になる
教会だけは、彼には我慢できなかった。大勢の人の賛美歌がとても汚れて聞こえると言ってこわがり、嫌がるのだった。
やがて教授は彼に、自分史を書くことをすすめるのだった。一生懸命に自分史を書くカスパーである。
だが彼はなぜか本当はしあわせではなかった。
彼の自分史が世間に評判になり、イギリスのある貴族が、後見人になりたいと言って、パーティーを
開いてくれた。
貴婦人や紳士が集まる広間から、気分が悪いと言って逃げ出して、なぜか編み物をしていた。
この奇行を見た貴族は、カスパーをイギリスにつれて帰るのをあきらめた。
手に負えないと思ったようだ。
その後、カスパーは何者かに殴られて負傷する。
何が起こったのか誰にも分からない。
その後また胸を刺されて、今度こそ本当に命を落としてしまうのだった。
誰が何のために、と警察も動いたが、やはり何も分からずじまいであった 。
彼はどこかすごい立派な皇帝か、貴族の落とし種ではないのかいう噂もあったことはあった。
ハウザーは砂漠で商隊の道案内をする「盲目の男」の話をして死んでいく。
彼の肉体は医者らによって、慎重に解剖され、特殊な脳と、特殊な内臓を持っていることが判明した。
それで全てが解決したと喜ぶ人々がいた。
だが本当の彼の正体は何も分からずじまいのままであったのだ。
一体彼はは何者だったのか。