スッポコ谷の楊貴妃

もうすでに還暦女子。すっぽこだにで瘀血と戦ってます。ホテルの換気扇が嫌いすぎて旅行できないのが悩み。

緑の髪の少年  1950年  ジョセフロージー監督  アメリカ  (the boy with green hair)

ピーターは一人ぼっちの少年だった。いつの間に一人になったのかも分からないのだった。親戚を転々とし、ある老人の芸人に引きとられた。おじいさんと呼んでいた。ロンドンからアメリカに渡ったピーター。おじいさんは芸人なので、夜は仕事で、ピーターは一人ぼっちになるのだった。

なんとなく寂しいピーターだった。ある日学校で、戦争孤児のイベントがあり、それらの写真を見たとたんに、戦争の事や、両親のことも思い出したのだった。ああ!ボクのお父さん、お母さんはどこにいるのだろう。ところが友達がきて、君は戦争孤児だろ。パパもママも

、死んでいるんじゃないか、お前なんで今頃そんな分かり切ったことを言うんだい?

その日からピーターの髪の毛は一夜のうちに緑色になった。緑、グリーン、green! green hair!

皆が珍しがってからかっった。

でも緑色の髪は治らなかった。

おじいさんは、床屋で髪を剃ることを勧めた。丸坊主になれば、出直しの意味でスッキリするからと嫌がるピーターを椅子に座らせる。

そこにはお客が数人待っている。ピーターの頭が丸坊主になっていくのをじっと見ていたが、何故だか皆が頭を垂れて悲しそうに出ていくのだった。彼の心が伝播したのだろうか。その恐ろしい秘密が、ピーターの目や髪を見れば、彼らにはわかったのだろう。

その後、彼は行方不明になり、今、警察に保護され、心理学の先生が来てくれた。

警察はピーターの言うことを信じず、緑の髪がなんちゃらかんちゃら、という嘘つきの少年に手を焼いた。聞いたことは何も喋らず、かたくなであった。

先生は結構立派な人で、子供の扱いに慣れていて、ゆっくりと彼の話を聞いてくれた。そして、この奇想天外な話を信じると言うのだった。誰も信じてくれず、途方に暮れていたピーター。大人は誰も、彼のことを信じてはくれなかったからだ。ピーターの相手をしたのは本当は児童心理学の大先生だったらのではないだろうか。ピーターは安心し、落ち着いた。おじいさんが迎えに来てくれた。

おじいさんは、ロンドンで出会ったピーターの母からの手紙を読み聞かせた。死んでゆくピーターの母の手紙には、子供のいく末を思って励まし、肯定していた。

それから、二人は仲良く家に帰っていくのだった。それがまたかなしい。優しい老人と、まだ子供のピーター。

たったこれだけの話だったが、

 

ピーターの目からも涙がこぼれた。緑の髪は悲しみの塊、戦争の口惜しさの象徴であったのだ。

幼くして、孤児になったピーター。彼になんの罪があったのだろうか。むくな 丸い瞳が戦争の悲劇を訴えている。

胸を刺すような幼い正義の目、いや髪であった。

 

緑色の髪の少年(字幕版)

緑色の髪の少年(字幕版)

  • 発売日: 2020/08/30
  • メディア: Prime Video