無責任シリーズであろうか。植木等が、侍になって、江戸に敵討ちに出かける話。
侍姿で、さぞかし暑苦しい映画と思いきや、これまたノリノリの出来であり、面白さも抜きん出てているように感じて驚いた。
敵役に進藤英太郎を配し、美しい花魁には、団令子、池内淳子などがなっている。
田舎者の谷啓と一緒に、ズッコケコンビで頑張る植木であった。
文無しになって、ある親分の屋敷に転がり込んで、好き勝手をしながらも、調子よくうまいこといくのが不思議なのである。
植木の不思議さはなんなのであろうか?
良い声だが、歌手ではない。男前とも言えるが、2枚目俳優でモテモテというのでもない。
どんなに頑張っても、頑張っているように見えない。
マッチョでもないが、ピョンピョンよくはねる。これは不気味な異星界の生き物のようにも感じる。
とどのつまり、脚本が素晴らしいのだ。演出が現代を超えているのだ。実にシュールである。
無責任男の方は、住むところもないような男の植木がある音楽の楽器会社に入ってうまく社員になってしまう。
そしてどんどん出世するのだが最後は社長にまでなるというストーリー。
「炊事洗濯まるでだめ」の歌も披露する。
クレージーキャッツの面々もいろいろな役になって出てきて和気藹々とした雰囲気が微笑ましい。
出世するためにお調子をこく植木、それもホラ、大ホラのお調子をこくので、嘘か真か区別がつかなくなる。周囲の者は踊らされ、いつのまにか、すべてがうまいこといっているのである。
サラリーマンの悲哀をそっと手に包んで、胸を張って無責任に歌う様は、まあ気持ちが良い。
まるで裸一貫のオッサンが着たこともない背広を着込んで踊ったり、走ったり飛んだりする。
だが、そこにはただ裸の植木が体当たりで演じる姿があるのみである。
お寺の息子であった植木は、本来はお経を読んで、無常のことわりを、人々に伝える仕事があったのだが、役者になって、役を演ずるということになった。
彼はいつも裸で演じた。ふんどし一つで、一人の男を演じたと同じである。衣装はただの仮衣。
普通の役者にはない雰囲気が漂うのは長所でもあれば欠点であるのかもしれぬ。
ただ話がシュールすぎて、最後はついて行けないのだった。
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