映画は見ていないので、本の事で。実は2年前の4月に夜と霧を書いていた。四月というのは何か意味があるのだろうか。
夫婦は、別々にされて、収容。その後夫人は殺されたのだが、フランクルは、それさえも知らずにいたのだった。知らぬが仏と言うのかも。
信仰の夫は精神科医であったらしいが、現場では栄養失調のために次々と人が死に、腸チフスが蔓延していた。その治療に駆り出され、獄の中の人々と接した。たった一枚の下着、それも擦り切れてボロ布になっている。
医師だったので、すぐに殺されたりしなかったのだ。とにかくなんでも一芸に秀でたものは優遇されるらしい。科学者だの画家だの音楽家だの大工だの。
主人公は、少し得をした事もあった。それを他の人にねたまれた。
接した結果、いろいろの人間性をじかに見聞きしたのだった。死にかけた人々、死にそうな人々、
人間のありとあらゆる悪い面が前面に押し出されるであろう事もおぞましいものだ。
人が死んでいく、リンチされるのを見ても何も感じなくなる。どんどん無表情になって心が鈍麻するのだったが、これは心の冬眠状態を表しているのだった。
そうならなければ、生きて行けないからだった。主人公もこれを体験し、驚くのだった。
人間はあくまでも汚く人をしのいでも生きようと企んでいた。しかし、企んだ人たちは、あっという間に殺されていったのだ。残ったのは阿呆の人々ばかり。
ただ純粋な何かを信じていた人々であったのだ。限界に及んで助かるというのは不思議なものだろう。
主人公の妻子は殺されたらしいと知って大きなショックであったが、生きることを選んだ主人公であった。
きっとそんな重大なことさえ、生きることの方が最も重要であったのだろう。
怖い将校が幾人もいて、人々を苦しめていた。地獄のような苦しみを与えて、いたぶるのである。
音楽が好きな将校は、ピアノやバイオリンが弾けるものを優遇したが、本気で優遇したのではない。
彼らは断崖絶壁で、演奏している様なものだった。他の人々は、彼らが優遇されていると思って羨ましがっていたのだが、気に食わねば、次の日には殺されていたりした。
ただそのピアノの音は、泣くような音で奏でられるので、わては絶対、よう聞きませんで。
人々が、コッソリとやっていたり歩いている時、「見ていなくても、全てを見ている」将校がいて、とても恐れられていた。骨の髄まで氷って砕ける様な鋭い目つきで、罰を与えるのだ。こっそり歩いているだけでガツンと怒られて殺される恐怖を味わう人々であった。
この将校のような人間がやはりいるのだ。なぜなら、こいつとよく似た「見ないのに全て見ている」女を知っているからだ。その女は弱いものいじめが三度の飯より好きという手をつけられない女である。
この女は、野菜売り場の女なんだが、店のないわての町ではここに行かねば、何も買えぬ。
それどころか、わてはここに野菜なんぞをおろしているんだった。
わてはよくよく残念で、考えた。この女をどういう風に凌げばわては助かるのかと。
ネギを買った時、わてが恐る恐る出した小銭をカーン!と音がする程強くレジに投げ入れる。なぜ、わてが出したお金をそんなに手荒く投げねば気が済まないのかね。なぜかお釣りのことで怒鳴られる。その神出鬼没の恐ろしさは人間業ではない。
そんなにわてが憎いのか。わての出した野菜をみんな干して捨てているのか。
おはようございますというと、なぜか「ちょっと来てください」と呼ばれて「こんなものを出して、お客さんから文句の電話があり、あなたの品物をへんぴんにこられました。」見ればなぜか粉々に砕かれた野菜を返品といってわざわざ渡してくる。餅を出した時は、歯型がついてぐちゃぐちゃに吐き出された餅がへんぴんされてきた。アンコのいちがわるいとのこと。?、?、?。
ある日気がついた。要するに、気の違った人といっても100パーセント当たっている。
おかしいだけなら怖くはない。そこに、上司とかライバルといった利害関係が生じる時恐ろしさが生まれるのである。
気の狂った人々は平気で人を苦しめて楽しんでいる。
気の狂った心を持った障害者であると、認識すべきである。
この店はアウシュビッツ ではないけどね。アウシュビッツはポーランドにあって、観光地になっているらしいで。
最後に、戦争が終わって、彼は助かった。他の生存者と共に。
アウシュビッツから助かった人々は、後に、何も語ろうとはしなかった。
心が圧縮されて変形してしまったかのようである。
助かったのは奇跡であったが、よく言われるように。、夕日が綺麗、と思えるかどうかという単純なことでその人の生存率が決まったのである。
ただ彼は医師で、インテリだから、プライドがあるわな。
それがやはり嫌味である、と思う。
- 作者: V.E.フランクル,霜山徳爾
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