スッポコ谷の楊貴妃

もうすでに還暦女子。すっぽこだにで瘀血と戦ってます。ホテルの換気扇が嫌いすぎて旅行できないのが悩み。

絞殺 1979年 新藤兼人監督

狩場勉、乙羽信子、と西村晃観世栄夫、など出演。狩場勉(かりばつとむ)は、本名で出演。

新藤監督67歳の時の映画。監督は100歳まで生きることになる。

 

絞殺派、題名のごとく、恐ろしい話であるが、意外とみじかに起こり得ることでもあろうと思った。

狩場家では一人っ子の勉が、良い進学高校に入ったので、エリートコースを真っしぐらだと、両親は喜んでいた。

父親は西村晃だが、小さな喫茶店を繁華街で経営していた。この人は若者に説教ばかりしていて、息子も煙たがっていた。時代錯誤な面があり、いつも家で威張っていた。なぜ喫茶店の店主で、こんなにお金持ちのような生活ができたのかと、ちょっと不思議だ。

このいやらしい中年オヤジの役を、西村は自分自身のように演じるのには抵抗がなかったのだろうか。

本当はもっと違った人であろうに、でも流石に、肝の座ったベテラン俳優である。

母親役は、監督の愛人(内縁の妻)の、音羽信子で、この人もこの映画で新境地を開いたのではないだろうか。胸をはだけての大熱演だった。裸も厭わず、監督の言うことをよく理解できている。一人息子を溺愛する母親役をうまくやっている。

最後はこの人、死んだ息子の部屋で自身も死んでしまう。残されたのは、油ぎった小汚い親父だけ。

息子は義父を殺した女子高生と関わりあったことをきっかけに 抑圧されたものが一気に暴力となって、噴き出してくる。

家中の物を壊し、親までも殺そうと襲いかかるのだった。

なぜこんなにも狂おしく、気が触れたのかは、それほど多くは語られてはいない。

ただ、「大人は汚い、最低な奴ら」と言った言葉が、投げつけられる。

 

逆に、親が、子供を殺してしまう。夫が執行猶予で出て来ても、妻はおかしくなっていて、壊されたボロボロの家に住んでいる。

こんな極端なことだが、本来どこにでもありえることではないのか。

だから余計に、怖い。

裁判官に、観世栄夫で、裁判中に居眠りをしている裁判長であった。

これはまた凄い皮肉であった。

 

新藤兼人監督の執念の一撃とかんじた。

また音羽も、監督の熱意によく応えて、演技に集中を見せた。

原爆の子などをみていて、彼女は甘っちょろい女優かと思っていたが、実はそうではないのだった。