狩場勉、乙羽信子、と西村晃、観世栄夫、など出演。狩場勉(かりばつとむ)は、本名で出演。
新藤監督67歳の時の映画。監督は100歳まで生きることになる。
絞殺派、題名のごとく、恐ろしい話であるが、意外とみじかに起こり得ることでもあろうと思った。
狩場家では一人っ子の勉が、良い進学高校に入ったので、エリートコースを真っしぐらだと、両親は喜んでいた。
父親は西村晃だが、小さな喫茶店を繁華街で経営していた。この人は若者に説教ばかりしていて、息子も煙たがっていた。時代錯誤な面があり、いつも家で威張っていた。なぜ喫茶店の店主で、こんなにお金持ちのような生活ができたのかと、ちょっと不思議だ。
このいやらしい中年オヤジの役を、西村は自分自身のように演じるのには抵抗がなかったのだろうか。
本当はもっと違った人であろうに、でも流石に、肝の座ったベテラン俳優である。
母親役は、監督の愛人(内縁の妻)の、音羽信子で、この人もこの映画で新境地を開いたのではないだろうか。胸をはだけての大熱演だった。裸も厭わず、監督の言うことをよく理解できている。一人息子を溺愛する母親役をうまくやっている。
最後はこの人、死んだ息子の部屋で自身も死んでしまう。残されたのは、油ぎった小汚い親父だけ。
息子は義父を殺した女子高生と関わりあったことをきっかけに 抑圧されたものが一気に暴力となって、噴き出してくる。
家中の物を壊し、親までも殺そうと襲いかかるのだった。
なぜこんなにも狂おしく、気が触れたのかは、それほど多くは語られてはいない。
ただ、「大人は汚い、最低な奴ら」と言った言葉が、投げつけられる。
逆に、親が、子供を殺してしまう。夫が執行猶予で出て来ても、妻はおかしくなっていて、壊されたボロボロの家に住んでいる。
こんな極端なことだが、本来どこにでもありえることではないのか。
だから余計に、怖い。
裁判官に、観世栄夫で、裁判中に居眠りをしている裁判長であった。
これはまた凄い皮肉であった。
新藤兼人監督の執念の一撃とかんじた。
また音羽も、監督の熱意によく応えて、演技に集中を見せた。
原爆の子などをみていて、彼女は甘っちょろい女優かと思っていたが、実はそうではないのだった。