高畑監督のかぐや姫、天才と言われるわけもわかりますね。前にもテレビでか一度見たのに、ブログに載せていなかったのはなぜだったのか。昨夜テレビで放映されてしまった。残念であった。
あの頃は弟が村岡花子の英訳竹取物語を出してきた時で、ワイワイ言っていたのだと思う。
主人公や配役の作りが、荒削りなラフスケッチのように描かれていて、かえって新しい感覚になる。
このかぐやという不思議な話を、よく理解した監督の力に感心する。
翁は、監督にそっくりに描かれている。 声優は地井武、嫗の声優は宮本信子で、抱擁力に溢れている。
村の子達と、山野を駆け回る姫(翁たちはそう呼んでいた)は、美しく人目をひくようになり、たくさんの高貴な男から求愛される。
難しい問題を出して、ツバメの巣や、火鼠の衣や、金銀の木などを撮ってこさせるが、どの男も失敗して、一人は、高所から落ちて、死んでしまう。
悲しみにふける姫であったが、時の帝からプロポーズされる。
帝は、かぐや姫といえど、自分の言う事を聞くだろうと、背後から抱きしめる。
だが突然に姫は消えてしまう。
姫は、ご存知のごとくこの世のものではないし、超能力を備えた者であった。
月からの迎えが来ると言っても、この世との未練が断ち切れない姫は、悶え苦しむのだった。
帝は、月の使者たちと戦う軍備を備えて、迎え撃つ構えを作った。
満月の夜、それはやって来た。
お釈迦様を先頭に、雲の上では優雅な音楽の音色が聞こえる。
兵隊は眠り、矢じりは全て花々へと変わっていく。
誰もその雲を制することはできない。
お釈迦さまは薄物を着ていた。
姫を招き入れて、空へ上がって行く。最後の別れを翁と嫗に告げたかぐや姫であった。
あの世とこの世の境を現したような姫の行くところは、時間も空間も超越した遠い遠い世界であろうか。
全ての記憶を失うと言われる雲の上。だがあの方(お釈迦さま)も、この世のことを思うこともないはずなのに、なぜか涙が流れる日もあったとかぐや姫は証言する。
まさに監督の遺作となった、立派な作品である。