庭師のトムは王室に使えるガードナーであっ他.世界を飛び回り、良い植物をイギリスの王の元に持ち帰るのがその仕事であった.2000年のある日、彼はメキシコ付近でゲリラに捕縛されて、それ以来9ヶ月もの間捕虜として捕まったままであった。絶望的な状態、助けが来るのかどうかも全く掴めないまま生きてゆくには不安だらけであった。
彼はこの南米地区に来たのは美しい誰も知らないような蘭の花を見つけるためだった。
彼はただただ心細く日々を過ごしていた.ただイギリス本国では家族達があらゆる手立てを尽くして、彼を探し出そうとしていた.色々な方面から彼を救い出す計画が話し合われていたらしい。
囚われの彼はある日、ふと夢を見たのだった.自分は自由になって素晴らしい庭を作り上げる、という夢であった.目が覚めて皮肉にも彼は相変わらずこの暑い国で囚われたままだったのだが。
そして彼は夢に見た通りの庭を作るための計画を実際に紙の上に描き始めた。
そうしなければ、彼はあっという間に、絶望の淵に飲み込まれて行ったであろう。彼は紙の上に色々な大きさの四角い形を書き続けた.四角い図柄を描いていると何故か、心がホッとしてほぐれてゆくことが分かった。
それで彼はずっと四角形を描き続毛て夢の庭の設計図を描き続けた。.このことで彼の悲惨な心は救われていったという。
この不思議な体験は、彼には神の囁きのようなものだったに違いない.ただ四角形を描くだけでこんなにも安心して子供の頃のようになれるとは。結局彼はジャングルに探しに来てくれたある新聞記者の尽力で助けられたという。本当かどうか、昔読んだ記事なので、私の記憶もあやふやであるが。
この前の夢では、私にもただ、この立方体を使った素晴らしい庭の構想が何故か閃いたのである.人は絶望的に悲しい時や不安な時、不思議な夢を見るものだ。クリーム色のコンクリートのかなりデカめの立方体が3個も4個も続く平たい土地.何故でかいのかというと、子供がかくれんぼできるようにという大きさにしたかったのだ。クリーム色には緑色の草花がよく似合う.立方体の下には黄緑の草花が蔓のように伸びている。クルクルクルクル巻きながら緑や薄緑の葉が見え隠れする。薄いピンクの花が一個二個咲いている。コレは私が考えた私だけの庭であった.誰の真似でもない。
自分で創作した庭はそれぞれ独特であり、媚びず美しい。だが、考えてみれば、それは子供の頃よく遊んだ川にかかるコンクリート橋のコンクリート制の石の欄干にそっくりであることに気がつく。子供の頃田舎ではコンクリート作りのものは珍しく唯一自慢の橋であった.町中の人がそれを渡って行き来していた。私は今でもわざわざそこに寄っては、川の音を聴くのがすきなのであった。今老人になっても自分でも何故そんなことをしているのか不思議でもあるが、この川の河川敷には河川工事で、コレまた正四角形のコンクリートが何十っ個も放置して置かれていた時期があり、この四角形の中に入ると、正四角形の中に囲まれて、まるで大きなお風呂につかっているような感覚になった。ここを棲家にして暮らしたらどんなに楽しかろう。
そんなことを想像していた。夜や雨の日は?大きな木の板でも載せておけばよかろうと。
コレにしたって何とも不思議な体験として記憶に残っている。
さて本国に帰ったトムハートダイクは、この不思議な運命に翻弄されなければ、気づくことのない貴重なものを得ることができたという事である。この体験を本にも著した。The cloud garden 、未だ日本語の翻訳本はないという。
彼の家系は代々大きなマナーハウスと言われる元荘園の庭を守って来た大屋敷のに住んでいる。
イギリスのこういう家の家具やその配置はなぜかどれも同じに見える。彼らは、こぢんまりとした部屋で暖かい紅茶を飲んだり、じゃがいもや肉を食べて過ごすのが大好きなのであろう。
無事に帰って来られた彼のこの奇跡はずっと語られていく不思議な話である。