これは、人間対自然という関係性?を描いたものであるーもちろん二者は最初から対決している者ではないにしても、人間が自然を捉える時、反対に、自然が人間を捉える時とを比較したものである。
というのはウソであるが、これは風景画について書かれた文である。自然というものは、人間のすぐそばにいながら、其れを扱うのは難しいという話である。先ほどまでそよそよとそよいでいた葉が、今では無関心にもぴたりと止まって動かないのだ。その冷酷さ。無情さは、徹底しているー風景画を描く人たちは押し並べて惨めな輩たちであるとリルケは冗談っぽく言っている。惨めなやからとはどんな人々であろう。
およそ今まで風景画について上手に書かれたエッセーは皆無であるということだ.。
この「ヴォルプス」は、読む価値のある文章.納得のいくものだ。ここまで書ける作家はいただろうとまで思えるほどだ。
綿密な文章、そしてガラス張りの様なクリアネス、豊富な知識、リルケはヨーロッパを遍歴したものとみえる。当たり前ではあろうが、各所で開かれる名画展に出会い克明に記録をとって書きたものだ。
これはその結果なのだー長きに渡りペンを持ち必死に書き続けたリルケは、ただの無意味な腰抜け詩人ではなく、立派な文学者であることがここで分かったと言えるだろう。
ロシアの文豪、ドスト、トルストイ、などにも話は及び、興味は尽きない。もちろんのこと、レンブラントについても。どこかで見た様な有名な絵画だが、一般的に名前まではよく覚えていない画家にてついても、北斎についても、コメントがついているのには驚いた。
恐れなくともよい、短いエッセーだ。
ただリルケにしては出来すぎた評論でもあり、何かリルケらしさがないように思う。儚く弱いリルケが急に大人のなってしまったのだ。誰でも とまどい驚くわ。