この話も、それぞれ14章からなるお話のひとつである。
裕福な商人の家では、人間の身体はスッポリと豪華絢爛なごちゃごちゃした布でかこまれ、もうからだがまったくみえないのでした。下層の家ではむさ苦しい布の服で過ごしておりましたーこれには神様も憐れみを禁じえられませんでした。
実はこの日は、造った人間をやっとのことで初めてよーく見てみようとされて観察にやってこられた日だったのです。
それでとても狭い屋根裏の斜めの天井の部屋に、一人の男が土を練ってぶつぶつ言ってました。
彼はミケランジェロという男でした。何が気に食わないんだと問う神にも何一つ答えようとはしませんでした。彼は長い間、注文が一つも来ないことに、不満を持っていたのです。ある日彼は市から要請を受けて市の公園に建てる像を造れとの手紙をもらい、像を造ったのですが、
局部が剥き出しの像は公園には不向きであると言われて罪人の様な扱いをうけるのです。なぜ、裸が悪いのか、神様はさっぱり分かられませんでした。
さて、別の場所に目をやると、なにやら貧しい小さな家がありました。そこには人間達が何人も住んでいて、うようようごいておりました。誰も殆ど服らしいものさえ身につけておりません!「そうだ、これがいい!人間はこの様に貧しくあるのが良いことである。」
神はそういって更に、「そうそう、彼らの持つ破れたシャツさえも奪って、シャツも着れない身分にしてやろう!と、言われたのです。
この話を、リルケは「施しの協会」の理事長の先生にはなしたものですから、先生は咳き込み、目を白黒させてしまったのです。
このような変わった話は、異端でしょうか。だからこそ、リルケは書かねばならなかったのでしょう。