スッポコ谷の楊貴妃

もうすでに還暦女子。すっぽこだにで瘀血と戦ってます。ホテルの換気扇が嫌いすぎて旅行できないのが悩み。

身毒丸   折口信夫著

時代は繰り返すもので、折口信男という人の作品が少し話題に乗っているような いないような。

蜷川が演出して藤原竜也が主役を演じたこのシントクマルである。多分に幻想的なものだっただろう。民俗学、国文学の学者であり、一つの学問 折口学といわれるものを築いた人だという。お堅い漢字を使った読めない文章、古典的趣味浸り切った教養人。能とかが何かしらブームになるような、こういうことが再び着目されるのであろう。作者折口自ら、シントクマルと呼んでくれ と書いているー私は初めはミドクマルだと思っていた。元々はある長者伝説が元になっていて、俊徳丸というのが本来であったようだ。

 「シントクマル」は、読み進むにつれて、幻想的な領域へと入ってゆくのである。目に見えないものを文章にしている作品だ。田楽の旅芸人の一座に生まれたシントクマルには悲しい定めがあった。座長の父親は禁を破って女と一緒になりシントクマルの父となったが、それゆえに、「奇妙な重篤なる病」になって死んでいった。シントクマルも女と縁を持つと同じ病にかかるらしく、その世にも美しい身体が損なわれてしまうのだった。

その事を知っている一座の親方は、女性に近寄る事を強く禁止していた。父親と同じ業を持つ美しい青年、いや少年の彼を守る事が親方の使命でもあった。どこに行っても女らの注目を集めてやまぬシントクマルの美しさと、禁じられた欲望との餌食に喘ぐ若者の奇妙な人生を描いた小品である。彼の美のために神仏に願掛けをして必死に祈る親方と、自分の心に忠実に従おうとする身毒丸の幼子のような純粋なこころが表されて行く。もう目に見えないものが見えるお師匠は父親と同じことにならぬためには仏への信心しかないと本気になっている。読んでいくとだんだんよくわけがわからなくなってゆくこの作品でもあるーだからと言って短いので難しくはなく読める作品である。