スッポコ谷の楊貴妃

もうすでに還暦女子。すっぽこだにで瘀血と戦ってます。ホテルの換気扇が嫌いすぎて旅行できないのが悩み。

ベートーベンの生涯   ロマンロラン作

楽聖として、これほど有名、しかし、そんなに深くその作品は知られていないのではないか、と思われる作曲家もいない。もう、ただ個人的にそう思うだけですが。

彼は肩幅広く、ムッツリとして、髪の毛はあちこちに乱れた人であった。しかも時々、激情に取り憑かれると、通行人を殴ったりまでしてしまい、誤解され、無視され、女性とは何故か縁が無く、なのに激しい恋に焦がれるのが常であった。

ただ恋は叶わなかったが、ある女性に捧げた「月光」の曲は、とても静かに我々の心を打つのだった。

彼は現実の恋を離れ、遠い空のエアーの中で、この曲を弾くのか。

まあ、時々は名声も付いてきたから、何とか溜飲を下げ、帳尻を合わせてきたのだろう。それは、俗人の卑小な思い違いだろうか。

最初はナポレオンを英雄視して、そう言う曲を作ったのだが、いつの間にか共和主義になっていて、ナポレオンを音楽で打ち負かそうと企むほどであった。

ゲーテとの不一致でも、皇帝一家に道を譲り、腰を低く沈めたゲーテを嘲笑い、ベートーベンはドクターXのように、道のど真ん中を平然と歩いた。ゲーテはその事を一生許さなかった。

だが、ゲーテの悲劇作品「エグモント」の作曲をしたベートーベンであった。

広場で処刑に遭う主人公エグモント、その人生、威厳が、これ程現れた曲はないとおもわれる。

人々に尽くした貴族の事を、そしてこの作曲は何処からきたものなのか?

ゲーテとケンカしたと言っても、コレはその垣根がとっくに払われているではないか?

 

子供時代の惨めな父親の虐待的しつけは有名なエピソードだが、それ以降も、血縁者の浪費、放蕩に悩まされ、とうとう一文なしの様な日々に至る。

靴は破れ、とても人前に出られる身なりではなかったが、彼は見栄を張って困っている様子は世間に見せたくなかった。彼にとって散歩は良いアイデアを呼ぶルーティーンであったが、靴が破れているので、そんな大切にしていた散歩も出来ないのだった。

この様に、気の毒なベートーベン、沢山の名曲を作っている。孤独で、人見知りだったベートーベン、

清らかな乙女の様な心を持っていたと言う。

 

ロマンロランの「ジャン クリストフ」という長編代表作では、このベートーベンが、モデルになり、音楽の道を行く主人公となったそうだ。