ベートーベンという誰でも知っているドイツの作曲家だが、この人についてどう調べたのか、ロランは必死の形相で書き綴った、と思える。随分の時間と労力を注ぎ込んだことだろう。
この新しい息吹を吹き込んだ楽聖ベートーベンは多くの識者から、狂人扱いされていたらしいが、そんな事は気にもせずに作曲に打ち込んでいた。
私個人としては、特別にベートーベン押しではないのであるが、ゲーテの戯曲「 エグモント」序曲は最高の出来だと思う。あの悲劇を目の前のことのように描き出した楽曲だ。エグモントが善良であればあるほど、悲劇の総量も上がって来るのだから。
そして、ベートーベンが孤独で、病気持ちで、天才的な才能を持っていた事はほぼ知られているが、彼の深い心の闇の辺りは、人は見て見ぬ振りをしていた。何しろ狂人であるという噂であったし、実際関わるのは怖くなるようなほど、彼の悩みは深く、多分神聖なものでもあったのであろう。
彼の「ライフマスク」(1812年 クライン作)が存在しているが、これを見る限り、弱いもの、苦しんでいる者、難儀にあっている者たちのために彼は曲を作っているのだとハッキリ分かる。それはそれでもう十分なことである。
あのライフマスクを思い出して、今一度重厚で静かな「月光」をききたいものである。
それについて言えば、音楽にも暗い私であるが、辻井伸之くんの月光の曲を推します。もともと美しい曲なのですが、ピアニストによって違うようです。
トルストイ; トルストイの小説作品は復活以外は読んでいない。また、彼の民話集も読んだが、これは魂の作品である。彼は若い頃から天才と言われていたのだが、彼はというと、誰も、何も現存のものは信じていないようであった。特に信仰とかは彼によればただの偽善に過ぎないのだった。人も騙し、何より自己をも騙すこの信仰心は我慢の成らぬものであり、世間との軋轢は常に強いものがあった。文化の進歩にもある意味 強い嫌悪を抱くのであった。
彼は何か教会と喧嘩して、破門ということになっていたらしいー詳しく通読もせず端折って読んだままこれを書いているので良くないなあ、とは思うが、チラ見で懺悔録とかはことのほか面白そうだ。
何か、独特の波瀾万丈の感があるトルストイである。その独特性が天才の所以でもありそうだ。
よく調べられていていて感心しますわ。