ゲーテ26歳の頃の作品。後にベートーベンもこの演劇について「エグモント」という楽曲を作っている。実在の伯爵エグモントの悲劇的人生だ。ゲーテは史料を読み込み史実をいいように脚色している。当たり前か。
エグモントは、快活で、心根も良く、市民の誰からも好かれている親方さまであった。
当時スペインに統治されていたベルギーのブリュッセル、フランドル地方、此処にエグモントの住んでいたお城が現在も健在である。エグモントは、あの世界遺産グランプラスの広場で処刑された。
市民の代表で、スペインに意見した彼は、ベートーベンの曲と共に、まさに今も生きているようだ。
優しさと大胆さ、賢明な大貴族であった。ゲーテの劇のための曲だ。やるじゃん、ベートーベン!
王様の姉の摂政様は、女性ではありながら、この地方を平和に治めて、エグモントらの諸侯にも信頼をおいていた。
だが、ある時、アルバ公が、王様の命令だと言ってやってきて、エグモントを捕らえて牢獄へ繋いだ。
女摂政は追放される。
アルバ公は民衆から慕われ、明朗なエグモントが許せなかったのだろうか。伯爵の位も剥奪され、これ全て王の命令だと告げるのだった。多くの兵士を連れてきて、街を占拠したアルバ公であった。
朋友だったオラーニエンという貴族は、早くもアルバ公の軒の下に入り、エグモントを言葉巧みに騙していた。親友面した悪魔であった。
何も疑うこともなく友を信じ、王に忠誠を誓ったエグモントは、まんまと敵の網にかかってしまった。
あの豪放磊落なあけすけな快活さ、誰をも元気にした優しい言葉、顔つき。これらは当然 、土気色をしたアルバ公には最も気にくわないものであり、エグモントの斬首の刑は着々と進んだのだった。
明日の朝、斬首があると知った市民達、そしてエグモントに憧れ愛し合っていた町娘のクレールヘンは、自ら毒を飲んで自死してしまう。
エグモントは、牢獄で運命を悟り、神に祈り眠りについた。金色の光の中で神に導かれる彼は、光ある道が彼の前にあることに気がついて目覚める。 斬首の刑の朝であった。
高潔なエグモントになんの非があったのだろうかと、読者は思い、英雄が殺され、悪者がのさばり返ることに、機嫌を悪くし、納得がいかないであろう。
だがこれは、ほぼ史実に基づいているらしく高潔なものほどが倒れ易いという皮肉と毒が、たっぷり盛ってある。だが気の毒なエグモント!
作者ゲーテは、この作品に、並々ならぬ思い入れがあり、日月もかかったが、仕上げて、公開となった。
世の中とは、これこの通りのものであろう。町人の雑貨屋や、仕立て屋達は、オレ達の英雄エグモント様は、純粋で騙されやすい人だから、気を付けてもらいたいものだと言っていた。
善悪が交差し、割り切れず、やり切れないこの世界の不条理をたくましく生き抜いたゲーテだからこその作品と見ている。
わたしゃこの作品にとても励まされた。
なんと言っても二十代半ばの頃の作品である。これ以後、ゲーテは、
次第にモンスタラスな巨匠として成長することになる。
ベートーベン作曲のエグモントも良い曲である。エグモントの悲しい身の上を偲んで聴いた。
この曲は、ベートーベンの中でも別格であろう。
ゲーテの悲劇《エグモント》への音楽 作品84: Ouverture - Sostenuto, ma non troppo - Allegro
- 発売日: 2019/11/01
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1749年ー1832年