京劇の養成所では、今日も激しい訓練が行なわれていた。そこに預けられた孤児のような子供達は、帰る所もなく、ただただ厳しい訓練としごきに耐える日々であった。そうしなければ、立派な芸人にはなれないと言われている世界であった。まるで、監獄のような暮らしが続く。
そこに一人の女の子のような少年が入って来た。この子も、この養成所で、訓練を受け、ついには京劇の最高峰と言われるまでに成長する。
その美しさは例えようもないほどであった。
兄貴分の劇団員と、女形の少年(蝶衣)は、項羽と劉邦のドラマを演じる。兄貴(小楼)は項羽に、少年は虞姫になって
演じる。項羽は覇王であり、強い大王であったが、劉邦の策に騙されて四面楚歌となり、虞姫とともに、死んでいく。馬も大王から離れず、虞は自ら首を切って貞節を訴え、こと切れる。
この悲劇が二人を強く結びつけたのだった。
その後、兄貴の結婚、革命、日本軍の侵略戦争などを経て、京劇も二人も大きく変化してゆく。
結婚によって、二人の関係も絶たれ、蝶衣も、アヘンに溺れていく。兄貴の結婚を許せない裏切りと思う蝶衣であったのだ。
その後、数年が経った。蝶衣の美しさは変わることもなかった。
だが、二人が、最後に出会ったとき、女形は、大王の剣を抜いて、死んで行く。
京劇の美しい素晴らしい芸が見られる作品である。京劇が、これほどのものとは、知らなかった。
演じた、少年や、レスリーチェンの力も大きいと思う。中国の底力を見せつけた映画である。
特に、少年は、あくまでも細く、華奢であり、特別に美しい姫となれるのだった。ためいき。
後半の蝶衣を演じたレスリーチェンは、、この後若くして死んでしまった。画面の中の彼には不透明で大きな矛盾が立ちはだかっていたように見受けられた。