障害者の給付を役所で取得しようとするダニエルの人生。
既に高齢者になっている彼は、ネットも使えず、役所にアクセス出来ないでいた。
役所の職員は冷たく利己的で、書類はネットで全て揃うから書類も渡してくれない。
それをしなければ、違反者として、ブラックリストに載るとまで言われて、うつむくダニエル。
あれもダメ、これもダメ。お金は、なくなる一方だった。
実は心臓の持病があり、大工として働くことは出来なかった。
役所で出会ったシングルマザーとその子供たちは、誠実なダニエルに、懐いていく。
手が器用なダニエルは、彼女らのために、家を直したり家具を直したりしてやる。
お互いに励まし合って、この困難な貧困生活をやりくりしてゆくしかないのだった。
大きな権力に立ち向かうどころか、どんどん小さくなって暮らしていくしかない弱者たち。
ダニエルや、シングルマザーの家族はただただ言われるままに、生きてゆくしかないのだった。
この持って行き場のない絶望のループは、いつまで続くのだろうか。
役所の外壁に、「わたしはダニエル・ブレイクだ」と、ペンキで落書きして警察に連れて行かれてしまう。
でも、路上の多くの人々は、彼にエールを送り賛同していた。
役所に訴えるために、弁護士に会うことになった日、とうとうダニエルは心臓発作にやられて死んでしまう。
彼は勇気がなかったわけではない。誰よりも誠実で、曲がったことが大嫌いで、暖かい心を持っていた人間だった。困っている人に手を差し伸べる人であった。
俳優も、朴訥な人物像をよく演じていた。
映画では、あのような温厚な人間が、なぜこんな目にあってしまうのかと強い問題を投げかけている。
社会の矛盾、社会の問題がいかに人間を蝕んでいくかが、よくわかる映画になっている。
このダニエルは、わたしのことである。」と、ケン・ローチ監督は語っている。
蔑まれた弱者を救わずして社会の何を救おうとするのか。
まあ、無能な権力者の欲望の犠牲になって犬死にするのが我々の運命なのではないのか?おそろしいことだ。