70年前という事で白黒っぽい映画だったような。
あるフランスの学校の先生で、すでに、40歳前後の男なのだが、ウブで、女のことを夢見て
妄想的になってゆく。
クラスの生徒のことや授業も上の空になり、教師の仕事もついお留守になってしまう。なのでいつも校長に怒られている。
というのも、校長の娘コレットが、寮にきてからというもの、男の先生たちは、皆、浮足たち、そのお年頃の娘の気を引こうとし始める。
だが、真面目でウブなテュルロ先生だけは全く知らん顔で、冷静を装っていた。
だが、生徒のいたずらで、コレットが、自分のことを好きだと告白したと、勘違いしたことから、
おかしな事になる。夢のような日々が始まり、娘との逢瀬が始まる。だがすべて、彼が勝手に作り上げた幻想なので、
気が変になってしまったと観客は思うだろう。
仏映画を見て思う事だが、フランスの学童のイタズラは度が過ぎていて大人を本気で痛めつける事があるようだ。
かわいそうなロベール先生!(普段はロベールと呼ばれていた)
コレットはそんな事になっているとは全く知らぬことであった。
ロベール先生との手紙のやり取りも、生徒が書いた恋文を先生は読んでいたのである。
コレット嬢は、若い元気のある先生と仲良くなってしまう。
テュルロ先生は、コレットが自分だけを愛して焦がれていると勘違いしたままである。
こんな人間って本当にいるんだよな。例えばこの私だって。現実的に恋をするなんて、真面目で、非現実的なロベールのような人間には所詮不可能なことなのよ。
その普通の人と、夢見る人との差がぱっくりと口を開けるのが怖い映画である。
見ていて胸がかきむしられるようなつらいきもちになる。人ごとではない。
先生は、事実を知り、書きためた幻想的な恋の告白ノートも生徒に盗まれ、自分の命を断とうとする。
かわいそうすぎる。
だが、命は保たれ、回復して、学校を去って行くのであった。
「あの人、本当は、いい人だったわね」コレットは、そんなことをつぶやく。
先生の恋は、終わってしまった。もう帰らない恋であった。
主役の先生の役は、ルイ サルーという俳優で、「天井桟敷の人々」の映画で、堂々とした大富豪のモントレー伯爵を演じていた。