この物語が、傑作であるというゆえん。
幼い頃から町内でよく知った子供同士。だが、近所にに廓があり、そこの花魁の妹が主人公になっている。
花魁は、廓の花形だが、結局、身を売った女ということで、本当は蔑まれていたのだ。
花魁の妹だから、やはり、それだけの女だろうと周囲は。おもっている。将来は姉の跡を継いで、
堅気になならずに、花魁になるのだろうと、思われている。
そんなことも気にせずに、無邪気に、遊び、育英舎で、字を習う美登利という娘だった。
そこでは、お寺の息子の信如(のぶゆき)が、秀才で、通っていた。
緑は、信さんのことが気になってしょうがない。
だが男と女である。あまりの接近はお互いに意識して避けていた。
地域では、いろいろな神社のお祭りや、酉の市などもあって、そのたびに、大きな賑わいと活気が溢れ、若者たちも、主人公のみどりも、誘い合って祭りに繰り出すのだった。
若者同士で喧嘩もした。派手な喧嘩であったが、それも祭の花であった。
喧嘩では、女の緑も負けてはおらず、男に混じって、乱闘に参加した。
「花魁の妹」と言われて、泥草履をぶつけられて、心が乱れた。花魁の妹、この言葉が若い心を突き刺したのだ。
それは、あのお寺の信さんも、そう思っているのだときづいたからだった。
将来は花魁、花街の掟なのか。
一葉はこのような廓で暮らす人々の生活を、よくよく観察していたと言われている。
祭りの乱闘の後、緑の体に変調がおとづれて、大人の女性として、生まれ変わっったのだった。
髪型も、大人の型に結ひ上げられたのだった。
男に混じって、無邪気に走り回っていた時代は終わったのだった。
会いに来た年下の男の子たちは、緑の変わりように、驚くのだった。
酉の市に男の子達と一緒に行くこともなくなった。
みどりは、本当は信さんが好きっだった。だが、とても身分が違いすぎるような気もして、気も引けた。ちょっとした事件もあったが、それも、知らぬ顔でスルーされてしまい、気が滅入ってしまった。
気が沈む中、信さんが、遠くの仏教の学校に行くという噂を聞くのだった。多分仏教の大学校であろう。
見送ることもできない、みどり。信さんはやはり手の届かない男性であったのだと、つくづく思った。
ただ、庭の竹垣には、一輪の作り水仙(造花)が、さりげなく置いてあったのだった。
みどりをいたわって信如からのあいさつであった。
何が傑作なのかっていうと、やはり、多くを説明せずに、読者に、人物の心情がわかるようになっていて、ゆえに、大声では言わずとも、すんなり気持ちが入って行き、理解できるという、文学の高級な手段がなされているという、故に、とても情緒豊かな作品となっていて価値が高いのである。
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