子供が、まずいことになって、私はなぜか初めて、ゲーテを読んだーそれも大作のウィルヘルム マイスターの三巻を、毎日読み続けていた。ゲーテの旅、軽やかな足取りで、何処まで行くのやら、これが本当の気の向くままの旅というものだろう。ウダウダウダウダ、モヤモヤモヤモヤ ああでもなく こうでもなく 時にはえらく世俗的な話もして、それがまたとても具体的な描写。でもこれ多分、ゲーテの罠というか、技というか。雲の上のような小説は書く必要のないものと、心得ていたゲーテ。時に人間臭くなるところが魅力でもある。
殿が、こんな世俗な事をお書きになって、お気の毒にと、ハラハラする読者。
人身の心を掴み、自分の世界に引き込むのだ。スパイスを使うように世俗のことも忘れていなかったので、それ故に実際のことのように思えるのがすごいところかな。彼のおおらかな旅は楽しく一緒に、草花を見たり、道端の石ころを避けたりするんだ。 秘密の花園、理想の教育の国、まあ、いろいろあって、旅役者達と共に進む物語、と言っても、特別で、特殊な筋書きがあるわけでもなく、たらたらたら、やって行くのがいい感じというわけ。それが、主人公ウィルヘルムの人格や行動が生き生きと掴めるのでありがたい。最後には、散々にお世話になった旅芸人たちともお別れをして、この長ったらしいお話は終わりを告げるのである。第二巻のある女性の告白文は、特別にエスペシャルなもので、他に比類を見ないのである。