どろろを見たのはテレビでのアニメであったような。ワテが12才の時だったなんて、信じられない。
頭が変なことになっていた頃だな。
手塚の作品の中では、一番好きなものだと思う。火の鳥や、ブッダなどの長編ものもあるが、主人公のキャラをうまく出していて、旅をする流れ者というのも気に入っていた。
アニメの百鬼丸に、憧れていたような。風にはためく着物の裾が、素敵であった。
「どろろ」という少年と一緒に旅をする百鬼丸は、生まれた時に、悪魔との取引で、目も鼻も他のものも全てないままで生まれて来た。それは殿様であった父親が、天下を取るために、子供を悪魔に捧げたためだった。
骸骨のような体だったが、ある医者に拾われて、木の体を作ってもらい生きていったのだった。
妖怪を倒すごとに、足や手が生まれてくる。目玉も耳も生まれてくる。
初めてみる空、初めて聞こえる人の声、など、驚くことばかり。
初めて喉から声が出てきたときには、オー、オー!と大声をあげたのだった。
仏教では、目や耳や鼻や口は、無眼耳鼻舌身意とかいって、全て無であるといっているのだ。
なのにわざわざ、苦しみの元になる、目や耳、口を加えて付けていく話である。
ハテナ?と思った次第である。
わざわざ、苦を身に付けなくても良いのにと思うのだが。
そしてだんだん人間らしくなってゆく百鬼丸。
相方の「どろろ」は相変わらずやんちゃで、「天下一の大泥棒」と豪語していたが、実は彼は女の子であった!
お別れが来た時、百鬼丸は、どろろに、「一度でいいから娘らしい綺麗な着物を着せたかったなあ」と、呟く。