スッポコ谷の楊貴妃

もうすでに還暦女子。すっぽこだにで瘀血と戦ってます。ホテルの換気扇が嫌いすぎて旅行できないのが悩み。

ゲーテ  ファウスト

博士は、長年勉強してきて、部屋の壁のようになった書物の中に住んでいた。あ、これはドンキホーテもそうだったわ。キホーテはある日突然冒険の旅に出て幻の化け物たちをやっつけて、愛する女の元へ帰って来る。そして安らかにあの世に行くのだ。頭の狂ったキホーテ様、でも誰も彼を嫌いにはならないのであるーその反対で彼をどんどん愛する様になる。純粋な頭の狂った男。だが心は狂っていないのだった。

 

ファウスト博士はいっぱい勉強をして立派になる。街に出れば皆がお辞儀してお礼を言ったりする。

彼ほどの立派な人間はいないという訳である。賢者にして、こころも清廉にして高潔なおとこであった。

だが、心を病んでいる博士だった。長年の勉学が博士の心を穿ち病魔のすみかを作っていたようだ。今更 ピョンピョン跳ねる元気もなかった。あまりの辛さに、ほとほと困るファウスト。心を病むファウストであった。彼は名誉も栄誉も手に入れていたが、気が弱いというか、孤独というか、とても内向的な男だったのだろう。生き生きと生きる向こう見ずな若者のように喜びを得たいと思った博士は、悪魔に魂を売り、その代金として若い肉体を手に入れる。だが酒を飲み、騒ぎ、嘘を言ったり、くすねたりして楽しく活動できる時間は意外と短い。

 

だが、人間の性格がコロリと変わる訳もない。何をしてもなぜかうまくいかない博士。要領が悪いというか、勉強ばかりしてきたというか。最後には広い土地を手に入れて理想の王国を作ろうと張り切るが、そこにどうしても立ち退かない老夫婦の農家があったのだ。満ち足りた生活をたのしむ農夫ーそれを羨んだファウストは、権力で立ち退かせようとするが、間違って部下が二人を殺してしまう。オーマイゴッド!

恋人は冤罪で死んでしまうし、結局のところ、博士はなかなか幸せになれないのだった。

人の幸せは何処にあるのか。この永遠のテーマが語られた作品は金文字塔ではあるかもしれないが、妙に息苦しく迫って来る面もあって、受け入れられない面も多かったように思う。