スッポコ谷の楊貴妃

もうすでに還暦女子。すっぽこだにで瘀血と戦ってます。ホテルの換気扇が嫌いすぎて旅行できないのが悩み。

リリーのすべて   (danish girl) 2015年    トム  フーパー監督

このある意味難解となるであろう作品をよく監督できたものだと、驚いている。

女性へと変貌してゆく夫の側で、支えつづける妻のゲルダ。こんなことなら、結婚ではなくて、友人婚であるべきだった。

こんなにも悩み苦しみ、女としての結婚生活も、捨てる覚悟をしたゲルダ。夫が夫ではないことを頭の中では理解できても認め難く、苦しみもがく。今も君を愛している、という夫であるが。

二人とも愛し合っていたのに、何故? コレが、LGBTの問題であることは明らかであった。

 

 

 

これは普通ではない事態へと向かってゆくのだった。彼の心は女であった。女でありたいと願うようになり、とうとうドイツのドレスデンで、大手術を受けることになる。これは彼の立っての強い希望であった。

それまでにも、精神科、外科など色々な病院で診察を受け、統合失調症と診断され、入院させられるところまで行った。

危ういところを、すり抜けて逃げ出した彼は、ショックを受けていた。まるで犯罪者扱いだった。

 

ドレスデンでの性転換施術は、世界初というものであったが、成功する。

教授は厳ついゴリラのような男である。この落差はすごい。監督の指示だろうか。

 

その後、社会へ復帰して、ドイツのデパートガールとして勤務し始めたリリー。幸せそうな彼であったが、抗生物質と痛み止めは欠かせない日常であった。

ところが、リリーは卵巣移植まで望んでいたのだった。

ここから全てが転がり落ちる展開だ。内蔵へと入った手術は、リリーを死へと運んで行った。

 

妻のゲルダは夫を失い、同時にリリーも失ったのだった。

この複雑怪奇な物語は、エドガー・アラン・ ポーも、びっくりな理解不能な気持ちになる。

 

残された妻のゲルダには、リリーの残した日記の出版、またリリーを描いた絵画がよく売れたようだ。

二人は、芸術家で画家の夫婦であったのだ。

マイナーな気分が強く出ている作品である。しかし悲しくも、美しい愛の力、そして限界とも言える妻の努力。それ以上にリリーの心の奔放さに惑う人間たちである。

主演のリリーは、エディ・レドメインであり、この人は、博士と彼女のセオリーのホーキンス博士や、ファンタスティックビーストの主役の俳優である。