放浪するガドルフ少年の話は、どこかで読んだような、そうそう、ヘッセの作品ヌクルプで、放浪する青年の話だ。1915年だが。ガドルフは、1914年なんだな。どんな縁で、この2つの作品が不思議な交錯の元にあったのかは知らないけれど、二人の青年が嵐の中を放浪して歩く場面など、似過ぎであろう。
ずぶ濡れの嵐に疲れ果てたガドルフは不思議な洋館に辿り着く。誰もいない大きな館で、窓の外には、
凛とした白百合の群が咲き誇り白い花々が嵐に負けじと立ち誇っていたのだった。
熱病のような体のガドルフは、稲光のたびに、見え隠れするその百合の花に見とれている。
なんと神々しい白さだろうと見えた。
大きな嵐と稲光の中で何とか眠ろうとした彼であった。
ただがらんとした大きな部屋やら、階段やら、その一隅で横になる。
目が覚めた時、百合の群れはまだ倒れずに凛と立ち尽くし、ただ一本のみが折れただけだった。
この百合が、僕の恋人だー嵐にも耐えたこの白百合たちが。
賢治が18才の時の作品とある。失恋を乗り越えるストーリーだったとも。
この得意な作品は絵本にもなっているそうだ。