オーソンウェルズ監督の審判を見ようと思ったが、こちらの方が落ち着きがあって良いと思った。ロシアとオランダの合作。
アンソニー・パーキンスは、サイコに出ていたが、少し痩せすぎである。
彼の存在自体が不安定すぎて本作を喰ってしまう。
貧しく暮らす人々に、申し訳ないと思ったり、彼等を理解できないのとで、社会的な解離を起こしていたはずである。父との確執は長引き、彼の心を苦しめた。
父は成功した実業家でもあり、カフカとは全てが、違っていた。だが冷静に考えれば、親子の確執なんてよくあることである。
だが自分のことになると、なかなか解決できないものである。
だが、それに苦しむカフカは、我々に身近な人間として捉えられる。カフカのあの苦しみを持って我々は、それを乗り越えられるのである。静かに寄り添ってくれる唯一の人であろう。
カフカは、それは色々考えただろう。神のこと、ユダヤ人のこと、社会のこと。
彼は自分の人生と思考を統合しようと、試みていたようだ。分裂した彼の文章は、まず見せかけであろう。
そしてついに統合は完成したと言っている。
審判では、主人公は訳のわからないうちに、見知らぬ男達に連れてゆかれ野原を横切り、石切場で処刑されてしまう。Kの素晴らしい未来を含んだ人生は、常に安定した豊かな生活は、ここで終わってしまった。
彼の繊細さと観察眼は、この世で格別であり、追随を許すものではない。
ただ彼には彼の骨格があり、その鋭い良心の下で彼は仕事をしたのであった。