スッポコ谷の楊貴妃

もうすでに還暦女子。すっぽこだにで瘀血と戦ってます。ホテルの換気扇が嫌いすぎて旅行できないのが悩み。

銀河鉄道の父   2023年   役所こうじ  菅田将暉

宮沢賢治はお金持ちの質屋の長男として生まれたー小さい時から多分神童と呼ばれる様な子であったろう。

あれだけの他に例を見ぬ作品を作り上げるには、とんでもない才能が必要であっただろう。ただ37歳の若さで結核で死んでしまった。死後に、父親らの尽力で賢治の作品は世の中に発表され、多くの人々の心を掴んだのだーその無欲さ、その飛び抜けた空想、ファンタジー

空想の世界で自由に飛ぶ翼を持つ白い鳥の様な賢治である。

東京から帰った後は妹が闘病した一軒家に1人で住み、畑を耕しながら暮らした。詩篇や童話のような小説を沢山書いたのだった。東京からもずっとずっと書き続けてはいたのだが、認められないままであった。ツテもコネもなく東京で出版社に一人で乗りこんでも、失敗は目に見えていたことだった。

特に銀河鉄道の夜は、傑出した美しい物語である。風の又三郎と共に、頂で煌めいている。いや、黒い巌の様でもある。眩しいのが嫌いな人もいるからだ。

映画でも本でも賢治の詳しい伝記的な経歴は深く明かされていない気がして、残念さがあとをひく。

伝記らしきものを読んだことはあるが、東京で散々な目に遭う賢治の姿が描かれていた。宗教にハマり熱狂的になり友人からもおそれ嫌われて去られてしまったり。

日本アカデミー賞ではテレビで菅田将暉がド金髪の髪に染めていて目立っていた。おかげで、この映画を観てしまった。金髪のせいで、観た映画。

役所は父親らしく渋い演技を押していた。伝記では、父は賢治のことを天馬に喩えたという。たぶん彼の原稿を読んだのであろう。父のいうことを少しも聞かないが、この子は天才であると認めざるを得なかった。

ただ田舎で一人暮らす彼は平々凡々と見えるただの男であり、何処にその様な天才の光を持っているのか、周囲のほとんどの人が気づいてはいなかったと思う。特に田舎は文化的に遅れていると判断されているし、ブラームスやベートーベンをきいたり音楽会を催したり、おぼっちゃん先生の道楽の様に思われていたふしもあっただろう。それでもあつい宗教的信念で人の心を尊重して幸せを求めていく賢治である。

「世界中の皆が幸せになれるというのはどういうことだろうか。どうすれば、皆が幸せになれるのだろうか。」銀河鉄道から一人で降りたジョバンニは丘の上でそっと呟くのである。物語の全てがここに集約されていく。カンパネルラらは汽車からおりずそのまま死後の旅を続けていくのである。

銀河鉄道に出会っていなかったら、私個人は此処にこうして存在していないと、言っても過言では無い。人々を救う役目をよくよく果たしてくださった賢治さん、ありがとうございましたです。

 

追記;  中原中也宮沢賢治、それから、外国人のゲーテかな。この三人が世界の名著と言っても良いと思っているくらい好きな作家でスウ。以前にも言いましたが、中也は、賢治の詩を高く評価していた様ですー私にはちょっと難解すぎですが。