トットが通うトモエ学園には いろんな子がいて珍しい子供も通っていたんだ。
中でも彼女のお気に入りがいた。それは学年が同じだがとても頭の良いタイちゃんという小さな博士のような雰囲気の子であった。トットは何とかして彼の気をひこうとするのだが、シニカルな彼はなかなかに手強いのだった。
彼は一日中アルコールランプを灯して実験をしていた。そういうことさえ許されている学校だった!
トットは頭の良いタイちゃんに気もそぞろで近寄る。靴はshoes,狐はfox,と教てくれた彼
「あなたって天才ね、マッチも上手に擦れるし、foxなんて知ってるし、あなたって物理学者(physicist)にでもなれるわね!ところでワタシ、実はスパイになろうと思うの。大きくなったらだけど」
これに対して彼はずっとアルコールランプのフラスコなんかを見て俯いたままである。ふと目を上げて
「無理だろうよ。君はお喋りだし、そもそも女のスパイは美人でなくちゃいけないんだから」
ガーン、とパンチを喰らった様になって、大きなショックを受けたトットでした。
タイっちゃんのお嫁さんになろうと毎日彼のえんぴつをペンナイフで削り続けたのだが、かしこい彼は冷たく言い放つ。物理学者の様なきらめきの片鱗を持った彼はトットちゃんの一押しの男の子でした。でも、
「僕は君とは結婚しないよ」そう言って園庭でスタスタ離れていったタイちゃん。
みよちゃんのところまで行って、このことを話すと、みよちゃんはいった。「トットちゃんってば、今日のお相撲大会でタイちゃんを投げとばしたわよね。」
彼の鉛筆を毎日削った努力も空しいものでした。
「どっちにしたって、こっちにしたって、わたし彼の鉛筆を削り続けるわ!彼のこと、何故か好きなんだから!」