スッポコ谷の楊貴妃

もうすでに還暦女子。すっぽこだにで瘀血と戦ってます。ホテルの換気扇が嫌いすぎて旅行できないのが悩み。

しあわせの絵の具  愛を描く人モード・ルイス  2016年

退屈せずに最後まで見れる映画。アシュリング・ウオルシュ監督(カナダ)

ある障害者の女性が、家を出て、ある家に家政婦として入ることになる。

それは漁師の独身者の家、でも野宿するよりはマシ。

漁師は、何だかとてもハンサムなイーサン ホーク。ワクワクするようないい男だ。一人暮らしの彼に、なんで家政婦が必要なのかな。まず飯、飯が作れて、掃除ができる女手が必要だったのだ。多くの仕事をこなすためには家がきっちりしていなくっちゃね。

女は障害をもっているかのような動作と顔つきをしていた。通年のリュウマチのために歩き方もぎこちなく、体は曲がっていた。よくもまあ、こんなおかしな痩せこけた女がいるものだ。

ただこの女は絵を描くのが好きで、絶えず絵筆を握っては花や、鳥などの絵をかいていた。だから、漁師の家の壁、窓、階段などには彼女の絵が描かれてゆき、またそれを、漁師は怒るふうでもなかった。

壁のチューリップの絵を見ながらご飯を食べることに怒りはわかない。変な趣味だと思っていただけだ。

 

飯が食えれば良い、あとのことは大雑把。いつのまにか、結婚していた二人だが、モードには重大な秘密があった。若い頃、子供を産み、家族はその子を彼女から切り離し捨てたということだった。辛い過去を乗り越えようとする二人であった。男性も孤児であったからね。

いつまでも電気も引かず自給自足で暮らし魚を近所で売っていた。行商だね。

近くの野原にでかけたり、雪の中を散歩したり、小さな虫と遊んだり、それがそのまま絵画になっていった。

 

 

ある日、ある女性が、彼女の子供のような絵に興味を抱き、5ドルで買ってくれた。もっと描いたら買う、とのことだった。

嬉しくなったモードは、嬉々として絵を描く。夫は、モードに絵を描くように促し、ペンキや絵の具を買ってきたり、キャンバスの板を作ってやったりと協力をする。家事も率先してやった。モードも必死になって絵をかく。ある日、モードのことが新聞に載った。夫は漁師であるということまで書いてあった。

次には、もっと有名になってテレビにまで出て、自宅の絵などが紹介されて、多くの人が絵を買いにやって来るようになった。

 

急にお金持ちになったモードたちは、やはり電気も引かず相変わらず人嫌いの生活をしていた。

 

叔母が、有名になったモードのところにきた。家をおいだした叔母であったが、捨てたはずの娘の赤ん坊は生きていて、元気に成長していると伝える。夫は、住所を調べてモードを娘の家に連れてゆく。美しく成長した娘は既に優しそうな男と結婚していた。

嬉し涙に暮れるモードはそっと離れて見守るのみだった。

 

モードの絵はどうしてこのような運命を辿ったのだろうか。ペンキを塗っただけのような幼稚な絵とも見える。

じっさいに、幼稚園児の絵のようにもみえるのだが。

しかし絵画の目利きの人たちは違った。独自性、オリジナリティ、構図、色合わせなどがうまくマッチして他にはない美しさがそこにはあるようなふうだ。

有名になってみると、本当にそう見えるから不思議だね。彼女の不具な体と人生を考えれば、なお一層その色は濃く鮮やかに映るのだった。

これは実話である。