スッポコ谷の楊貴妃

もうすでに還暦女子。すっぽこだにで瘀血と戦ってます。ホテルの換気扇が嫌いすぎて旅行できないのが悩み。

花筐 (はながたみ) 能楽 世阿弥 室町時代

なかなか良く出来ている能楽なのではないか。

なにせ、主題も美しく、花筐である。

片田舎で暮らしていた皇子が、急に、都で、天皇に即位するということになり、慌ただしく、迎えの従者らと田舎の邸宅を出て行ってしまった。

仲良く遊んだ腰元の照日の前(テルヒノマエ)という女は皇子を慕って、都へと後を追いかけて行く。

王子と一緒に花を摘み遊んだ花筐を、召使いに持たせて、慣れぬ路を尋ねながら歩いて行く。

心に思う面影は、もはや届かぬ天皇となられる王子のことのみであった。

そして、恋い慕うあまりに、気の狂った女のようにも見えるのであった。

とうとう、王子の一行に追いつき、会わせてほしいと頼んだが、断られる。

私はテルヒノマエといい、王子もご存知の親しかった女です、と説明したが、あっちへ行けと、断られる。

辛い女は、保ってきた花筐を差し出し、これがその証拠の物というと、これはなんと、どこで拾ったのかといわれる。

どこかに捨ててあったものを取ってきて、王子の花筐だなどという、とんでもなく、恐ろしいことを企む無礼な者と言われてひどくあしらわれた。

 

かなしみ、うろたえるテルヒノマエであったが、舞ったり歌ったりしているうちに、皇子がカゴを見せなさいと言ってきた。

よくよく見れば、確かに田舎で遊んでいたときの花筐であった。

 

照る日の前は許されて、都で天皇になってからも、お仕えしてもよろしいということになり、

なんと嬉しいことよと、舞うのであった。

 

美しい足さばきが、素晴らしく独特であった。