久しぶりに、能を見たので、報告。
小野小町が、すごく年をとり、99才にまでなっていた。宮中にも務めていた小町は、美しさと、才能で もてはやされ、日本中で有名になったが、老女になってからは醜く老いさらばえ、酷い有様で物を乞いながら歩く乞食(コツジキ)になって彷徨っていた。99という数字は、無限を表す。
死ぬに死なれぬこの身、というわけだ。こうなっては、まさに生きるも地獄であろう。
高野山の僧が二人、京へ向かって行くところ、仏がまつってある卒塔婆の朽ちた根元に腰かけた老女を見て、卒塔婆に腰掛けるのはよくないと説教を始めた。
老女は次々と哲学的な比喩を言い放ち、僧たちをギャフンと言わせた。
私はかつて小野小町といい、美貌のために、男たちを手玉にとって苦しめた、と告白し始める。
特に深草少将が小町に恋をして最後は狂死にしたと。
彼の恋の怨念が小町にとりつき、何やら狂乱の様へとなって行くが、やがて、夢から覚めたのごとく、
僧の前に頭を下げて、仏の悟りへと精進することを申しておわる。
ここで、僧と出会ったことが、彼女の狂った運命を浄化し、再生を誓う。
とにかく動作がゆっくり過ぎて、100才近い老婆ゆえに、なおさらのろいので、もうどうしようもなく、ゆっくりで現代離れしてはいるが、能とは、大体、現実の仕事雑用から離れたところに遊ぶもにであろうから、これで良いのだろう。だが、いつまでも話が進展しないので、まいった。
三島由紀夫の「近代能楽集」の、卒塔婆小町は、サバサバとしたドライな老婆であり、とても対照的である。
三島は、歌舞伎や、能楽に入れあげていて、自分で、脚色した現代劇を作ったのだ。
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