葵の上では、光(源氏)が、病院のベッドの上にいる葵の見舞いにやってくる。
その病院は、性的病院であり、看護師や、医者や医院長まで、互いに交わって楽しむという、なんともトンデモな、病院であった。リビドーの処理のためだという。うへー、そんなことがあるのと、おどろく。
そこへ、六条の宮康子が、黒い装束でやってくる。
ヒカルは私のものだ、この葵という女には渡さないぞ!と、えらい剣幕で言う。
苦しむ葵の上にかぶさって行く康子であった。
その内、康子の家に電話したところ、眠ってお休みになっておられますと、女中が答える。
では先ほどの女は誰であろうか、康子ではなかったのか。そこへ、再び、康子が黒い装束でやって来る。
不思議がる光の前で、葵は、もがき苦しみ、ベッドから落ちて死ぬ。
これは三島の筋書きだが、現代版に変えられていているぐらいで、ほぼ原本の通りである。
生き霊の恐ろしさが、凄まじさが、源氏物語で語られる。源氏物語でも、夕霧を生んだ後に葵の上はやはり死んでしまう。
人の妬みを買うことは、実は、本当に怖いことなのだ、と紫式部は説いている。
また熊野(ユヤ)では、桜の美しさと愛人のユヤの女の美しさがダブルになって、日本的美を歌い上げた美しい作品となっている。
桜の儚さと、雲のような花に包まれる春のこの時、解説はプロフェッサー のドナルド。キーンである。
だが、三島は自分の才能に逆襲されたかのようにこの世を去る。
頭脳明晰、溢れる文才、に恵まれ過ぎて彼自身の内部に起こった葛藤、或いは凡庸な。、いやらしい矛盾を解決する事が出来なかったのではないだろうか。
彼が、時折見せる素顔には、どうしようもなく平凡な面がある。そこが面白いと思うんだけどね。
これを機会に、他の能楽も調べてみると、芸能の宝庫であった。
隅田川など泣いてしまいます。子供をさらわれて、狂女になってしまった母親の話であった。
隅田川の渡し舟の船頭が、あの有名な狂女なら、狂ったふりをして見せねば船に乗せないよと言ったりする。子供の墓に辿り着き泣くが、きっと仏が母親の心をすくってくれることであろう。
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