スッポコ谷の楊貴妃

もうすでに還暦女子。すっぽこだにで瘀血と戦ってます。ホテルの換気扇が嫌いすぎて旅行できないのが悩み。

宇治拾遺物語 第8巻ー7より 千手院僧正仙人にあふ事

千手院の和尚は、毎日 夜がふけるまで、尊勝陀羅尼の御経を読むのが常であった。

それが長年続いている。お経を聴く他の僧たちにもその声が心に沁みるのだった。

そうしているある夜のこと、経を唱えていると、空から声が聞こえて来た。

だがとても小さな蚊の鳴くような声、元気のない声であった。

それでも、戸を開けてみると、仙人が雲に乗ってこちらを見ていた。

私は陽勝仙人というものです。空を飛んでいたらこちらでお経の声がしたのできたのです、という。

お入りなさい、と招くと、すーっとやって来て和尚の前に座った。

よもやま話の後、香炉の煙に乗ってまた去って行ってしまった。

 

ああ、あれは昔わしが使っていた僧であった。

其奴は昔、修業の途中で、どこかへ行ってしまい、もう帰ってこなかったのだ。

長いこと不審に思っていたが

今来たのが、あの僧であった。

あいつが、今日帰って来てくれたのじゃ。

 

そう行って、思い出すたびに、泣いておられたということじゃった。

 

 

 

高僧の涙はなんだか美しい。ところで仙人とは死んだ人なのか?

かすみを食って、松の露を飲むとか、いわれている。

なぜ仙人になった弟子のことで涙が溢れるのか?

死んでしまっっということなのだろうか。