1100年頃の昔、伝わっている物語を集めた説話もの。
古典が大の苦手だった若い頃、もしこれらの物語が教科書に載っていたらどんなに面白い教科になっていたことかと国語の教育の方針を恨むものである。
だが、上品さのない話も多く、どこか俗であることがいけなかったのか。
夏の暑い日に、用事もやめてのらくらとしている午後、少しづつ読むのが楽しみになる。
どこを開いても面白おかしい、怪しげな話が載っているのが嬉しい。
いまと何も変わらぬ生き生きとした庶民や貴族、動物たちもおもしろい。
京都の錦通りの名前の由来とかは、ちょっとおどろおどろしくて京都の人に悪いようなものであるし、
遣唐使の子供が、中国でトラに食べられてしまい、父親はトラを殺したが、子供は死んでしまったので、せんないこととある、とある。
旱魃時に雨乞いを祈る僧侶などの話もあるが、これなどは
現在において切実な問題である。雨が降らずに、庭木も枯れて行くような年は初めてである。
ワテも、やっとのことで旱魃というものがやってくる年があるということを知ったということだ。
むやみにやたらに樹木を切ったりしてはならないのだった。樹木は日影を作り水をまもる。
何も知らずに、春に少し剪定をした木は今、茶色になり枯れそうになっている。
日本霊異記/今昔物語/宇治拾遺物語/発心集 (池澤夏樹=個人編集 日本文学全集08)
- 作者: 伊藤比呂美,福永武彦,町田康
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