宮崎勤から大阪の小学校、秋葉原、秋田の子供殺人と色々な囚人と、実際に獄中で会い、話を聞いた著者の本である。
それは相当の重圧とストレスがかかるものである。
殺人犯と面と向かって話して、何とか心の闇を紐解いて行くのである。
彼らは、家庭において、まず、ものすごい虐待の中で生き抜いて来たという過去が揃っている。
また母親が骨折しながら、子供を庇うというような経験が日常にある。
常にビクビクして怯えながら暮らすのは、どんなにか苦しいことだろう。
また、家族は、他人同士のようにバラバラで、家族と言うには、あまりにもお粗末なものであったケースも見られる。
怒りが、どんどん蓄積していく中で、ある日突然噴火するのだ。
彼らが悪いのであろうか、いや、本人の凝り固まった心は、多分生まれつきもあるかもしれないが、大きな犯罪を起こすまでに環境の悪さが影響していると、著者は判断している。
話の中で、垣間見える彼らの心の奥は、愛に飢えた野獣の様になっているのだ。
悪い記憶は全部抜けて、記憶が途切れてばかりの人が多いいのも特徴だ。
宮崎勤は、膨大なビデや漫画に埋もれていたのだが、ほとんど手をつけておらず、見ていた形跡がなかった。
ビデオを見て良からぬことを想像していたわけではなく、もともと障害のある腕を持った少年は、家族からも疎まれていた。
空想癖が激しく、自分の空想は清らかで、唯一汚されていないものであった。
少女を好んで殺したが、体には彼の痕跡は残されていなかったのだ。
彼は性的不能者であった可能性があった。
彼らの中には、獄中結婚をした人もいるのだ。
女性は、死刑反対の主義主張を持ち、死刑囚と結婚すると言う暴挙?にでた。
多分、彼女は、家族とは絶縁されているだろう。
夫の死刑後の長い人生に、何が待っているのだろう。
しかし、死刑囚の心に愛の灯火が光り、最後まで、彼女のことを思っていたらしい。人間として生まれ、
最後には、初めて人間として死んでいったのだ。
我々も、彼らと、さほど変わりのない生活をしているのではないだろうか、と思いながら、本を置いた。

殺人者はいかに誕生したか: 「十大凶悪事件」を獄中対話で読み解く (新潮文庫)
- 作者: 長谷川博一
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2015/03/28
- メディア: 文庫
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