香川照幸擁する1家族、美しい妻(小泉今日子)と、二人の男の子の四人暮らし。
この一件平凡な家族の壮烈な物語といえば、そうかなという感じ。
はじめに、香川が、会社からリストラされたことから、歯車が狂い出す。
このような、管理職でやって来た男は、リストラされると、妻ににそのことを隠し、こっそりと職安にいくのだった。
職安の長い長い列を見ているだけで、人生のえげつなさが見えてしまう。
ようやくたどり着いたのは、大手デパートの掃除夫の仕事であった。
それでも何もないよりはマシである。そう割り切って 汚れたトイレなどをゴシゴシ掃除していたのだ。
こういう場合の管理職だった男は、どうにも納得がいかないという顔である。
リストラされた友人の夫婦が心中自殺するという事件を知ってショックを受ける香川。
明日は我が身というわけだ。
ただ、この映画は唐突になんでも出てくるので 笑える。
急に役所広司が出て来て、今日子を誘拐するのだ。海の方に連れて行ってそこで自分の馬鹿馬鹿しい人生を嘆くのだ。それを優しく慰める今日子であった。
今日子は、家事ばかりのアホではないのだ。色々なことに心配りをし、家族に対して、自分のできる最善のことをずっとやって来た女であった。そういう主婦をバカだと思う人の方がより馬鹿である。
家庭でも大変なことが起こっていて、長男はアメリカ軍の傭兵になり、中東方面に派遣される。
次男は給食費を使って、こっそりピアノを習い、父親にブン殴られる。
なんやかんやでうまくいかない家庭家庭.。
リストラされた事がばれた香川は、デパートのトイレで100万ぐらい入った封筒を拾ったが、
最終的にネコババをせずに返却ボックスに封筒を投げ込む。
このことから、人生の転機が訪れるようになる。
真面目にコツコツ働くようになった香川、今まで通り家事に勤しむ妻、
ピアノに天才的才能を花開かせた次男のピアノ発表会。
ピアノの曲は、ドビュッシーの「月の光」である。
次男はこの曲を心を込めて弾き、多くの人が、感動する。
父親も母親も、心から嬉しく思えた。新しい家族に生まれ変わったのだと自分達の心に確信を持って頷く両親と次男。
黒田監督の観察眼が光る一品である。
特にただの主婦の逞しさ、磨かれ鍛えられた人間性、ここに光を当てたことである。