スッポコ谷の楊貴妃

もうすでに還暦女子。すっぽこだにで瘀血と戦ってます。ホテルの換気扇が嫌いすぎて旅行できないのが悩み。

さてさてわてが4歳の時

さてさてわてが4歳の時、夜になると向こうの道から、羽を広げた黒い鳥のようなものが、よく飛んで来るようになった。あれは何?と、聞くと、おばあちゃんが、あれは、お姉ちゃんだがや、お姉ちゃんが、学校から帰って来ただがや、と教えてくれた。ふーん、あの人はお姉ちゃんか…。

おばあちゃんは、いつも、姉が帰って来るのを玄関口で待っていたわけだ。優しいおばあさんだったが。

姉とわては10歳違いで、姉は広島に原爆が落ちた頃に生まれ、わての頃はまだ、道も舗装されておらず、土ほこりも立っていた。

水は井戸から汲み、大きな甕に、入れられていた。4歳時は、甕に背が届かないのでいつも、水ちょうだい、水ちょうだい、とせがむのだった。おばあちゃんが汲んでくれていた。5歳になって初めて、カメの水の上の水面が見えるようになった。やったー!これで自分で水が飲めるぞ。エッヘン!わても大きくなったものだ。

 

ある日突然、誰かが、わての前に黒い影になって立ちはだかり、おい、こら、私はお前のオネエちゃんだぞ。今から私のことをお姉ちゃんと呼ぶんだ、いいか分かったか!明日からはこのお姉ちゃんと遊ぶんだぞ、いいな。チビ。

これは、母親に言われたのだろうな。妹を遊んでやれと。教育書通りにする親だったもん。

はいはい分かりましたよ、あなた。あんたは、つまり、わてのお姉ちゃんというものなんだね。

人間?いや人間だろうよ。猫ではないことは確かだわ。

ひとつカクレンボウの仲間にでも入れてやろうかのう。

 

ブーフーウーと言う世にも面白いものがあると聞いたが、それは此の世のどこにあるんだろか。きっといつか、会えるだろう。これはテレビというものがこの世にできたということらしい。

 

 

雨だれとミツバチ、小石とアリの行列、この繰り返しが四才のわての全世界だった。

雨だれのつくる水たまりほど、きれいなものはなかったし、みつばちとアリはいつもの安全な遊び友だちだった。ミツバチは決してわてを刺さないのだ。

 

でも人間というものが分かってからは、恐怖が入り込み、世界が歪むようになったのだった。

意地の悪い友達が現れて美しく従順な世界は、ばらばらに壊れてしまった。

 

 

ブーフーウー

ブーフーウー