スッポコ谷の楊貴妃

もうすでに還暦女子。すっぽこだにで瘀血と戦ってます。ホテルの換気扇が嫌いすぎて旅行できないのが悩み。

旅芸人の記録 1976年 アンゲロプロス監督

f:id:dekochanya:20160227011318j:imageさて、なぜかテレビで見たことがあるのだが、この映画は忘れもしない「旅芸人の記録」である。今回30ー40年ぶりに再び見たのだが、何故かもっともっと面白かった記憶があって、期待しすぎた感があったようだ。

いや、たのしかったですよ。座長の娘も相変わらず、すごく美しいし、アガメムノンの敵討ちの筋書きだとは思っていたが、ちょっとちがっていた。座長のおくさんが、別の芸人と不倫していて、座長は、その男の策略にかかって、殺されてしまう。これは残酷なことだった。人の良い、やさ男で、芸を知った座長だったから。そして不倫男は大手を振って、座長のおくさんと夫婦気取りで座長の座に収まるのだった。
旅から旅の暮らし。こんな事がそもそも可能ろうか。皆で助け合ってゾロゾロ行くのだからできるのであろうか?こんな旅ができたらどんなに楽しかろう。と思うのであるが。大変なことも多かろう。だが小さい時からこんな生活でも成長し大人になっているのであるから、人間も、野良猫のようにしぶとくたくましいものだとおもった。旅をするところは、さながら、キリストの一団のようなかんじと重なるのである。
ところが、この一座の芸人は、たいした芸達者で歌もうまいし身のこなしも良いので感心する。
娘には小さい男の子がいて、この子も一人前に旅をしてゆくのである。
ところがおりしも世界大戦が始まって、どこでもかしこでも、軍隊が人を殺し始めて、きょうふ政治のようなありさまとなっていた。ゲリラが処刑され、イギリス軍が、ギリシャを鎮圧していた。ギリシャの人々は、イギリス軍をきらっていたが、しかたなくいうことをきいていた。よくはわからないが、政治的な事がえがかれていた。集会ではいつも人々がころされていた。軍は、もはや、国民の敵であった。自由と平和を愛する旅芸人旅たちにとってつらい日々がおとずれた。ただ劇の衣装などがはいった大きなトランクだけは離すことはなかった。荷車代わりのロバも取られてしまったが芝居の道具箱だけは死守するつもりであるのがみてとれた。
彼等の求めるものと戦争は正反対のものであった。ただ貧しくつつましい彼らは黙りこくって暮らした。銃声がとびかい空襲が破壊を進める街でもはや一座を開くことは不可能となった。民衆もただただ時間がすぎゆくのをみているしかなかった。または革命か 、死か。一座のものは、それぞれバラバラになってゆく。座長の娘は以前の仲間を訪ねていって、もう一度一座を立ち上げようと話したが、皆の心は戦争のために壊れたようになってしまっていた。
ラストは青年になった息子とほんのわずかの団員で、やはりもう一度劇をすることになった。彼らの血はそうせずにはいられないからであろう。これがラストの場面であった。
一巻と2巻になっているのだが、一巻の方がおもしろい。セットはアレキサンダーと同じあたりでされていた。2巻目は蛇足といえば蛇足である。せっかくよいコンセプトなのに監督はこの映画を一つにまとめてつくれなかったかと思うと、惜しい気がする。彼は長ったらしいのがすきなのだろう。
まあでも大したすごい作品を描ける人でもあるのだから、感謝。f:id:dekochanya:20160227011303j:image

 

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