チェスの世界一を決める大一番、ソ連とアメリカの冷戦時代だ。この2つの国は、どんなことにも勝敗を決めたかった。
少年の時からチェスの天才と言われた青年ボビー・フィッシャーはソ連の王者と戦った。
これはほぼ実話であると言う。
アメリカのフィッシャーは、幼い頃から、その天才をあらわし、大人の有名なチェスプレイヤーたちを
どんどん追い抜いていった。
それ故、母親は訝って心配し子供精神科医のもとに連れて行っていた。精神科医とチェスをすると、あっという間にフィッシャーが勝ってしまう。その後も、アメリカで勝ち続け、その一手一手にチェスの大御所たちもその魅惑の一手に、涙を流して見守るという有様であった。
いよいよ、世界王者を決める日がやってきた。
一方ソ連の選手も英才教育を受け勝ち進んできた大物で、ボリス・スパスキーといった。
二人とも既に、精神的におかしな症状が現れていた。敵に盗聴されている、といって、ホテルの備品を次々と分解したり、行方不明になったりで、周囲の人たちは手を焼いた。だんだん目つきがおかしくなって、試合を二回もボイコットしてしまうフィッシャー。
そこではアメリカとソ連の威信がかかっていてもれぞれの大統領から励ましの伝言が来たり、キッシンジャーが電話してきたりと、周囲は慌ただしい限りであった。
お互いが、恐れを覚えていた。ソ連のスパスキーは、奇しくも言った。
「おれの師匠が言うことには、自殺をする者が、勝負を制するのだと。」
なんとも厳しい言葉であった。
勝負に勝つことは、死を意味するということだ。
その間にも、精神の崩壊状態は進み、フィッシャーの親族は、かれを病院に連れて行って欲しいとチェス連盟に申し込むが、彼らは大切な試合なので
フィッシャーを渡すことはなかった。
最終的には、フィッシャーがなんとも奇妙な、みたこともない手を使う。
今までのフィッシャーの得意な手は封じ、全く未知のチェスの手を使うフィッシャー。
コレには誰も驚きソ連のスパスキーも脱帽、席を立って、負けを認めた。
アメリカ中が沸き立ったのも束の間、彼は、その後、放浪者となり、奇行を繰り返し、亡くなっている。
勝負の恐ろしさと、それに関わった人間の運命が描かれたちょっと怖い映画であった。
スパイダーマンになったトビーマグワイヤが、神経がひりつくような青年を好演している。
この映画、前にも見ているなあ。