ある日、お腹の空いた私は、アンパンを盗み、走っていた。それに気づいた店の少年に追いかけられて、「ドロボウ!あんぱんを盗みやがったな!」食いしん坊の私は
走って逃げたが、とうとう狭い通路の向こうの広場で、捕まり、ナイフで、真正面から腹を刺された。
痛さで立てないほどだ。食べかけのアンパンは、口から落ちてそれを拾って返したが相手は許さない。
よく晴れた昼下がり、小さな広場には、地蔵様が鎮座していて、変わらぬ笑顔で、見下ろしていた。
朝になって腹に手をやってみたが、傷はない。あれは、夢だったのだろうか。今だに、あの時の痛さは、よくおぼえているのだけど。