こういう本は、必要でなんです。ただこれが本物であればのことですが。何れにせよ、役立つものであろう。かれらの心の中が、何となくわかってくる。
これは健常者からの素朴な疑問の数々である。どの質問も直接彼らに聞きたかったものばかりである。
時々街や近所で見受ける彼らのことを、我々はほとんど知らない。近所の子供であっても、あいさつもかわさないようにしているのだから。
とにかく何もかもがわからない。そのように困り果てた周囲の人たちの為にも、もっと早くもっと大声でこんな本が存在していて、助けになるよー!と言っって欲しかった。
彼らは悩んでいた、苦しんでいた、周りの人を驚かせたり失望させたりする自分がとてもとても悲しいのだと言っている。小さなつまずきが彼らを大きく狂わせるので、彼らは、その度ごとに、大騒ぎをしてギャーギャーとわめき散らし周囲は無力を実感する、の繰り返しになる。
しかし、お願いだから見放さないで僕を見守って欲しいし、そうでなければ自分は生きていけないのだと強く訴えてもいる。それは本当だろうか。自立がよいことと叫ばれている現代にそんな甘えたことを言ってと、眉を上げるのは少し待って、である。そういう考え方もある。色々な考え方があるのであるから。
体に触られると、心を読まれてしまうのではないかと怖いそうだ。自分がそんなに苦しんでいることを知られるのが怖いそうだ。なぜなら、触った人はきっとその苦しみを知ってとても深く驚くだろう!からだそうだ!
これにはびっくりした。
テンプルグランディンと言う人がいて「自閉症を生きる」等の著書を書いているが、彼女自身が自閉症で学校からも奇異の目で見られ自分の居場所が見つからず悩んだことが書いてある。
ただ彼女は牛が好きで叔母の家で牛の世話をして、牛を落ち着かせてなだめるための押し付け機の中に入ったところ、とても気持ちがよくコンフォタブルであった。
これも、彼と共通していて、重力の問題として書いてある。地球の重力は軽すぎる。だから跳びはねるのだと。
もっと思い重力の中であれば、彼は普通の人のようにさっさと行動が出来るはずだと言って、夢想している。飛び跳ねるのは重力が軽くて月の世界で行動しているようなものなのだとか。
テンプルはその後勉強して大学の教授となり牛の行動学、牧畜の第一人者となっている。
彼女の考案した牧畜のシステムはアメリカ牧畜の80%にも及んでいる。
東田君によると、彼は言ってみれば、宇宙人のように地球に存在していると思えるそうだ。当たり前のことが、知らない外国語のようにムズカしく、とどかないもののようにかんじるからだった。
生活の中での戦いの連続である。体の動かない人がさっさと着替えたり物を取りに行ったりするのに人の何倍も時間と労力を費やすようなものであろうか。
彼の一生懸命さにはだれもが脱帽である。彼は生きている、そして生きようとしているのであり、素直に我々に助けを求めそばで見守っていてくれるから生きていけるのだとシンプルに言っている。
この言葉には我々も感動して彼を守ってやりたいと思い、それが逆に我々の生きがいになるという良い面をもっている。まあ、ちょっと辛口の生きがいではあるがな。
最後に彼は小説を書いている。恐ろしいショッキングな内容である。
かれは、不気味な変なおじさんに連れて行かれて何の理由なく突然死んでしまう。そして天国に行くのだが天国からすっかり悲しみでやつれ果てた両親を見ているのだった。
彼は家に帰ることはできなかったが、いつも彼らのそばでみてるからね、っていうものだ。両親もまた立ち直り、妹とアイスなど食べているのだった。
彼は家族のためにじぶんがいないほうがよいと思っている。だから幽霊になったのだった…。
まあこの本を誰が書いたにせよ。このシュールな小説は彼の発案な事は確かであろう。この様な不思議な物語は、そう書けるものではない。
スッポコはこの本の言っていることを信じて、こういう子達と接するときの指南書とするつもりである。
。
自閉症の僕が跳びはねる理由―会話のできない中学生がつづる内なる心
- 作者: 東田直樹
- 出版社/メーカー: エスコアール
- 発売日: 2007/02/28
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