読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

スッポコ谷の楊貴妃

もうすでに還暦女子。すっぽこだにで瘀血と戦ってます。ホテルの換気扇が嫌いすぎて旅行できないのが悩み。映画の感想を書いていきます。(^o^)

Jonny Got His gun ジョニーは戦場に行った 1971年 公開

手足が一本もなく、口も鼻も目もない。舌も歯もない。こんな身体になったジョニー。戦争で爆弾でふきとばされたのだ。それ以来、珍しい生ける屍の標本として軍の病院で生き続けるジョニーだが、まわりのひとたちは彼が誰だかだれも知らない。また彼は心を持たない、いや持ち得ない重症患者というか人間ではない何か(something)として取り扱われた。

しかし彼は思考ができた。ありとあらゆる思考ができた。かれは戦争にきたことを後悔した。故郷では可愛い恋人があれほど行くなと止めたのに、自分だけは死なないと過信していた。彼女とは結婚の約束をしていた。可愛い彼女で平凡で律義そうな若い女だが裸のうしろ姿は、均整のとれた健康なものだった。惜しいことをしたもんだ。彼女が「別の男と結婚したのよ。ジョニーが帰って来なかったから。」という夢を見た。ほかにも夢か現実か分からないような心理的に危機的状態がかれのなかで繰り広げられていた。かれは自分が手も足も顔もほとんど何も残っていないことを悟っていた。
生きることを望んでいたわけでもなかったが、自ら死ぬことはもっと出来ないことだった。
なぜか「イエスキリスト」が夢に度々出てきて身近な友のように話を聞いてくれるのだった。
「言いたい事があったら、大声で叫べ!な、そうだろ。とにかくさけべよ!」「ぼくは口がないから叫べないんだよ」
かれのような極限状態にあっては色々な幻想が次々と浮かんでくるのは当然 であり過去 未来にわたりそれは痛々しく父親や 恋人が幻覚を伴って出てくる。まるで麻薬を飲んで出てくる幻想のようなもの。かれには現実が一握りも残っていない。埋葬の時に入れる「チリ」というゴミほどの現実味もなく自分の意思が伝えられない石ころのような存在としてみなされる。キリストは 金髪で 体格の良い男だった。イエスの母親は黒人だった。息子であるイエスをを必死でさがしていた。「あの子はすぐにいなくなるのよ。でもとてもいい子なの!お手伝いもよくしてくれてね。」これからわかるようにかれの幻想は辻褄が合わない。のだが人間の心の不思議を見るようで興味深いものだった。所詮、元気な人でも頭の中は彼とさして変わらないとおもう。
ところで唯一動かせる頭部を使ってモールス信号をお送ると、看護婦が気づき、軍の人が集まってくる。なんでも願いを叶えてやるよ。「what do you want?」かれは「外に出てこの身体を見世物にして、ドサ回りがしたいのだ。」
と答える。これは昔パパがサーカスを見て冗談で思いついた事だった。Oh No ! 皆の顔に深い困惑の色がにじむ。「そうでないのなら、殺してくれ。Kill Me!」かれはなぜこんなトンチンカンなことを言ってしまったのか?ドサ回りなんてね。でもね、これはパパとの思い出だったのだよ。優しい彼はパパ、のことがたいせつだった。ああパパ、パパ!
看護婦が、空気の管を切ってかれを天国に導きかけたが、軍のお偉いさんが入ってきて、また標本として、軍の管理下におかれてしまった。今度はもう永遠に出ることのできない、日の光のない暗い地獄の様な部屋に入れられてしまう。かれはもう、生きることも死ぬこともできないままであった。また彼は決して自分の姓名を名乗らなかったのである。 おわり。
追記 ・ 重い病気になった人なら、彼の気持ちだいたいわかるでしょう。これはそういうものを芸術の域まで到達させた作品でおもしろいものにしあげた。
f:id:dekochanya:20150905105821j:image 
f:id:dekochanya:20150905105848j:image
トランボ監督はローマの休日の脚本を書いた人ですが、映画の監督作品はこれ一本だそうです。

 

ジョニーは戦場へ行った [DVD]

ジョニーは戦場へ行った [DVD]