スッポコ谷の楊貴妃

もうすでに還暦女子。すっぽこだにで瘀血と戦ってます。ホテルの換気扇が嫌いすぎて旅行できないのが悩み。

太陽がいっぱい アランドロン主演 1960年 ルネクレマン監督

兎に角、ドロンを追い詰めるイタリア系の刑事が怖い。鍛えたどすこい体と目つきもこわすぎる。

この刑事だけで、この映画のすごさがわかるはずだ。リアルでよくできた演技、体からみなぎる恐ろしい雰囲気、殺人者のドロン追い詰めていく様が、身震いするほどリアル感があって怖いのだ。

お金持ちのお坊ちゃんを殺して 彼になりすまし(レプリー)、お金も恋人(船舶会社のご令嬢)も手に入れて、大きな安堵感に浸った彼を待ち受けていたのは、この三人の怖い男たちのみであった。残念!

太陽がいっぱいだ」嬉しくてそう呟いたのもほんの一瞬であった。

それがこの映画の題名になっている。

「音楽もよし、脚本もよし、配役もよし」と三拍子揃った珍しい良い映画となった。

こういうことは結構珍しいので、何十年経っても愛される映画として残っているのだろう。

 

 

太陽がいっぱい 【特典DVD付2枚組】

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幻聴川柳

ひとひらが重いと感じる里山の秋。

 

困ったぞ、どっちを向いても壁になる

 

うだってる秋の日中に種を蒔く

 

 

日本の白い壁 (INAXミュージアムブック)

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火天の城 2013年 田中光敏監督

田中監督、こういう人ね。なるほどね。すごい映画だ。

たださっきまで、他の人の感想を読んでめっちゃ面白くてゲラ笑いしていたのだ。

完璧を期そうとしている監督がギャグになってしまうこともあり得るのだ。

 

16世紀の中頃のこと、織田信長に仕えた宮大工の岡部又右衛門という番匠(棟梁)がいた。

この人、名古屋の熱田神宮まで作った凄腕の大工だった。

安土城滋賀県にあって琵琶湖を臨む大城である。これを作ったのが又右衛門である。

 

 たくさんの大工の匠をたづさえて取り掛かった安土城であったが、五層7階とあって、無理難題ばかり。

見たこともない大きさの親柱を探しに木曽の地方に行った。きっと神のような檜があるにちがいない、と思ったのだ。

それは、伊勢神宮遷宮に使うご神木であったが、切って又右衛門に授けた。

巨大な親柱は何百人もの人たちが、綱を引いて、掛け声と共に柱を上げていった。これじゃあCGだ。

 

蛇石いう蛇の文様の石は巨大で山神の石あったが、信長の命よってこの石を運んだ。が、昔からこの大石を動かすと、不吉ことが起こると言われていた。

とうとう、たくさんの人が石の下敷きになり死んでしまった。

 

大嵐が来て、多分台風だと思うが、七階の天守閣が潰れる事を悟った又右衛門は、皆を呼んで、縄をかけ人力によって、柱と城の屋根などの重さをみんな乗せて引っ張らせた。

親柱を四寸切るためにだった。

これが最後の大仕事であった。

 苦心と知恵と勇気でもって大きな安土城は完成を見た。

 しかしこの城は焼けてしまって、今はもう石垣しかないのだった。

日本で初めての超高層の城であったのだが。

 信長は天中殺とでもいうような人生の犠牲になった。

 田中光敏の作品は上手にサビまで持って行き、ぐっと心を掴むので面白い。

 

だが、こればっかやってると、いずれは飽きられてしまうと思った。

なんとか工夫して、変わったものも作ってみると良いと思う。金髪ものとか。

また、田中光敏という名前はやめて欲しい。重苦しく、平凡の極みなので、良くない。雅号でも持つべきだ。横文字で外国名とかも面白いだろう。

Mitutosi-田中にするべきでしょうよ。

 

 

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野菊の墓 松田聖子主演 1981年 (伊藤左千夫原作)

野菊の墓、なんとも儚い題名である。今までにも映画化されたことのある純愛短編である。

聖子19歳の初々しすぎる姿、化粧してない自然顔がみえるよ。

 

ワテ以上のおばさんになると、なぜか純愛に憧れて、この映画で何度も涙が溢れる。

これは不思議ですね。心の浄化作用でしょうか。若い二人の純愛が、なぜだか胸を打ち、汚れのない若い時を思いだしたり、もうそこには二度と戻れないという諦めとが混るのだ。

 

まあ、日本のロミジュリといっってもよいくらいの完成度があると感じた。しかも重厚な西欧ではなく、竹かごを背におって畑に歩いて行くと、道に地蔵さんがあるような、のどかな日本の風景が広がる。桑畑が続く穏やかな丘の畑。そういうところで繰り広ろげられる本当のような恋の話。

本気に真剣に恋をしてしまった若い二人はまるで、死に至る熱病のようなものだったのだ。

その危うさにまるで気がつかない大人達の無神経。

これまじロミジュリに似てるわ。

左千夫マジックといってもいいだろう。

 

そういう地方で家柄が違う同士で、良い商家のお坊ちゃんは家を離れて上級学校へ旅立つ。

 

下女として働く聖子は、子供の時からの出入りであったが、一つ年上で、これがよくなかった。

無理やりの縁組をさせられて、軍人なんかと結婚した。

 

「君は野菊のような人だ。野菊の花が僕は好きだ。貴方はリンドウのような人。リンドウがほんとうに好き。」と言い合った二人。ただそれだけの誓いで結ばれていた二人であった。

その思い出と、坊ちゃんからもらった手紙を死ぬまで離さなかった彼女のあわれは周囲の人たちの胸を打ったのだった。

坊ちゃんに悪い虫がつかぬようにと、無理やり、怖い軍人と結婚させた人たちは、はじめて後悔するのだった。

女は身ごもり、姑にいじめられて畑で流産し、それが原因で死んでしまう。

 

こんなお話を伊藤左千夫はとても綺麗に作りまとめることができた。

さすがである

 

夏目漱石は、伊藤に「君の野菊の花は、名品だ。美しくて綺麗で自然でよく出来ているね。 この小説は100回読んでもよろしい。」と、絶賛の手紙を送ったそうだ。

漱石先生、「題名」が違ってませんか。あれ?

 

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