これもウィンストンチャーチルと似たり寄ったりの、内容だった。
やはり同じく、1人で見て涙に洗われていた。
連合軍最高司令官のアイゼンハワー大統領、フランスのモンティ閣下などから、時代遅れな爺さんだと罵られ、自信をなくして、ガックリ肩を落とす。
だが、実際に、何万人もの若い兵士が死ぬのではとの危惧から、彼はどうしても立ち直れないのだった。これは殺人と同じだ!と声を張り上げるが、誰も耳を傾けないのだった。
経験豊富なだけは、用心深くなっていたチャーチルを励ます国王や、妻であった。
彼にとっては、あまりにもたくさんの若い兵士や、戦艦、空軍を失うのは自分自身の死をも意味するものだった。チャーチルは常に、国民と共にあったのだ。
明日の演説の日であった。全ての国民皆が聞くことだろう。戦場の兵士らも耳を尖らせることだろう。
だからあなたは、自信を持って皆を励ますような熱い演説をするべきだ、と妻は強く言い切った。
栄光のための勝利ではない、「自由」のために勝利をかちとろう!諸君一丸となって、頑張って、フランスに今こそ自由を取り戻し、しいてはヨーロッパ全体を救うのだ!
そういった内容の演説は、素晴らしく、皆を奮い立たせた。
彼はあらかじめ、言葉を選び抜き、原稿を何度も書き直したりして、スピーチに備えるという用意周到な男であった。文学的な人であったのかもね。