スッポコ谷の楊貴妃

もうすでに還暦女子。すっぽこだにで瘀血と戦ってます。ホテルの換気扇が嫌いすぎて旅行できないのが悩み。

わが母の記  2011年   原田真人監督  樹木希林  役所ひろし  他。  井上靖 原作

この前、NHKで、樹木希林内田裕也夫妻の事が特集されていたーナレーターは娘の内田也哉子だった。お騒がせな夫婦であった。

その中で、自分の演技が良くないところがあった、と言って仕切りと反省する樹木希林がいた。

芸歴も長くてクセもすごい人だが、それ故か反省点があるという。

多分、歩いても歩いてもとかで、癖を出し過ぎたことかと思う。

母の記では、さらりと流したような流さぬような、掬い取ったうまい絹ごし豆腐のような味をだしていた。この演技は凄かったですね。またそれについてゆく役所も良かったよ。ボケた母に真剣に向かってゆく。

役所は井上靖の役で、作家であった。青い狼(ジンギスカン)等の歴史に詳しい作家だった記憶がある。

 

希林の着物の着方は久々に良かったー着物とはこんなふうに上品に着て実用となるのだ。地味な黒い生地の着物は襟足から裾までが美しく生き生きとしていた。ド派手な着物で出て来る若いタレントさんの着物は、テカテカとしてなぜあんなに汚く見えるのか、ざんねんである。実用が無視されて瞬間の写真用だからかも。樹木希林の着物には飯田蝶子という昔の女優さんの着物以来の美しさがあった。

着物には歩く、立つ、走る、泣く、など色々な動作が染み込み、しゃんとした生活がそこに現れるものだった。

 

思春期に母親に捨てられ、親戚で育てられた靖であったー母は子沢山で、長男の靖を捨てたのだ。夏目漱石みたいですね。

 

ボケた母が、靖本人の前で、「子供に会いたいんですよ。小さい時に別れたまんまなんです。本当に、会いたくてね」

と言う。本人は目の前にいるのだが…。

そのうち、なぜか、ソラの暗唱が始まる。母は、滔々と、暗唱してみせた。それは、靖が本気になって書いた小説の一節であった。

一言も間違うことなくスラスラと暗記された彼の小説。なぜ、今、いや、いつ、?

靖は驚き、立ち上がって別の部屋へと走った。泣きそうであったーいや泣いていた。

母は、彼のことを遠くから本当に想い忍んでいたことを知ったのだった。