エミール シンクレールと、マックス デミアンの二人の少年の物語。
シンクレールは、良い家庭の坊ちゃんであった。気の弱いところがあって、強気の不良に絡まれて困っている。
金銭絡みのゆすりであった。お前のうちは金持ちだろ、、云々。
暗く項垂れるシンクレールの前に突然引っ越してきたデミアン少年が現れた。そして不良が二度と近づかぬ様に手を打ったのだった。
だが、どうやって?デミアン少年の眼は深く、誰もじっと見つめられると顔を背ける。
シンクレールはデミアンが味方になってくれたことで、いきいきと人生を感じる様になった。
大人っぽいデミアン、近寄り難く、神秘的なデミアン、学校や、クラスではでは大声をあげないデミアン。不思議な魅力の虜になっていくシンクレールであった。
そんな彼も、上の学校に行くために故郷を離れる。その街で偶然、再びデミアンと再会する。
喜び勇み、デミアンの母にも紹介された。美しいエヴァ夫人であった。
デミアンは人をよく観察し、心を読む術を習得していた。コレは出会った頃からも変わらない。
その内、大戦をが始まる兆しがあった。ロシアやドイツがうごめいていた。ついに始まった戰慄すべき大戦であった。
二人とも国の命令通りに戦争に行った。負傷兵の病院に寝ていたシンクレールは、そこで再びデミアンに会う。
運命を感じたシンクレール、だが、次の朝、目が覚めると、デミアンは消えていた。お別れのキスを残して。
彼は何処に行ってしまったのか。またしても彼を逃したシンクレール。
だが、シンクレールはずいぶん大人になっていた。辛い人生も、乗り越える構えができていた。
デミアンとは、彼の何であったのか。不思議な出会い。シンクレールがあまりにも弱い故に、デミアンに出会うこととなったに違いない。
内なる眼を持ち、何者も恐れなかったデミアンの思い出……。
どちらも、この世からはみ出した人間で、ヘッセの自己もかつては人生を投げ出し絶望の手中に落ちていたのだ。それを救ったのはやはり、クヌルプや、デミアンの様な人達であったのだろう
ただどうしても語りえない存在をヘッセは伝えたかったに違いない。
ヘッセは1877年ー1962年まで生きていた。第一次、第二次大戦を体験した人であった。