この三人が、この雅な庭についてそれぞれ語る三遍。
ここは御所の中の洞泉御所(とうせんごしょ)という場所に、洲浜という所がある。琵琶湖の水が流れてくる池なのだが、清らかで美しい。
浜には、周囲一面に黒い球石がズラリと並べられ、乱れることはない。
およそ、離宮の中でも、この池ほど美しいものはない。井上の的確な文章がきわだっている。
本物の離宮は、何か離れたところに存在する。だからこその離宮だ。
ただこの離宮にたどり着くには、予約というものが必要だが、ただ予約すれば良いというものでもない。
三島、井上、大仏級以上の人たちでないと入れないということなんだろうか。
御所の洲浜に行くのでも、何か関所があるのかもしれぬ。何が、特別な由緒正しい家の人々だというパスポートなど。
洲浜はともかく、離宮となると行くこともないだろう場所。京都の喧騒の隣に、木に囲まれたこの秘密めいた場所が佇んでいる。
土橋があちこちにあって、本霧島ツツジが一斉に咲いている。カラー写真で見ると、位置が分からない。
各部屋の不島の襖(フスマ)の模様や、小物の細工などは、あまり見たくはない。
早く全景を把握して、この池のフチからのの景色はこんな風で、あちらの土橋あたりから眺めると、こことここが見えるとか自由自在に把握して初めて、お気に入りの門やや、お気に入りの木が見つかるというものだ。
解説者の伊藤ていじの章では、写真は白黒で、茶室などが載せてあるが、とても渋くて、その時代の文化が彷彿と伝わってくる写真でとても素晴らしい。この苔むした土を踏み門をくぐるときの空気の香りや、色というものが見えてくる。
400年という長い月日を経てきた庭は、天皇が、退位して上皇となった後暮らす場所として建てられたものだ。上皇の日々をやすらうために、庭も苦心してきたのであろう。