石原という男は、庭師だ。初めは花屋から初めてその後、大きくしすぎて 年商30億円以上となったが、バブル後には破産した。だが大きな借金を返すべく家族を抱えて右往左往していた。
彼は、それでも花を取り扱う仕事から、離れることができないのだった。何故なら、それが彼の人生の原点であったからだろう。
個人宅の庭仕事を頼まれて、庭造りに目覚めた。昔、生花を習わんかと父に言われて、花と触れ合うことが楽しいと感じた。
小さい頃から、里山の植物を見て触って育った。その緑の原点が、彼の原動力となっている。
緑と遊ぶ、緑と戯れる、いつの間にか、明るい真昼から夕方になり暗い夜が降りてくる。
草木と戯れていると時間を忘れて夢中になる。田舎では、暗さが際立っていて、8時すぎには、まじで真っ暗。何故なら、みんな寝ているからだ。信じられないだろうが、本当のことだ。すっぽこの暮らす地域でもそんなことだ。夜、最近できたコンビニに行くのも、悪いことをしているようで、恥ずかしいのだ。 夜8時過ぎにコソコソと泥棒のようにコンビニに出かけるスッポコ。
長崎の酪農家に生まれて牛飼いと言って虐められてきた少年時代。寂しい彼はいつも、自然の草花と遊んでいたらしい。水も豊富で、綺麗な水があちこちに流れている場所であった。
そういう時間が彼の心を少しづつ美の世界へと運んでいったのだろう。
実力をため込んだ彼が放つ庭の美はイギリスの古い伝統を持ったチェルシーフラワーショーで、銀メダル、ついで金メダルという栄冠を勝ち取った。