戦艦大和の沈没風景から始まるこの映画。初めはよくわからなかったが、映画の最初から、負けである。
戦艦大和をめぐり、ある1人の天才数学者の話である。
世界と日本の調和はバランスが崩れ日本は孤立することになってしまった。国際連盟からも脱退をする。世界恐慌の裏で日本は経済的な成長を求めて満州へと進んでいった。その後世界の状況を
鑑みた日本は戦争へと突き進んでいくことになる。勝利するためには偉大な軍艦を作ると言う構想が海軍にとって、なくてはならないものになっていた。ただ巨額な費用がかかる軍艦に国のお金を注ぎ込んでも良いのか。
海軍の山本五十六でさえ、もう海で戦う戦争は古い、と考えていた。
山本は若い天才数学者を呼び、突然に少尉の位を授けた。数学の極地でこの馬鹿げた計画をなんとか覆せないものかと山本五十六は考えていたのであった。彼は軍艦ではなく、航空母艦が必要だと主張したのであったが頭の古い軍人たちは誰も取り合う事はなかった。櫂少尉は短い期間に戦艦を作る費用を弾き出し戦艦を作ることは、予想以上の巨額な費用がかかると言う事を証明したのであった。それだけでなく彼はこの戦艦の持つ構造的な弱点を皆に示したのであった。
戦艦などとは全く無縁で机上の数学だけを得意とする彼だったのだが美しくないものには納得がいかないと言う感覚を持っていた。どこか歪な設計図をみて、美しくない部分が引っかかるのだった。
海軍のお偉いさんが設計した軍艦は、巨大な大きさのなか、台風のような大波に弱い事を指摘した。
対立していたお偉いさんは、櫂の天才に驚き、船を作るために彼の力を借りようと考えるのであった。
そんな約10年後、海軍の軍艦は着々と出来上がってゆく。
誰もが驚くような大きさの偉大な船であった。いや、巨大な軍艦であった。
この船を、「大和」と名付ける。そう聞いて、少佐は身震いする。
日本の国民が、この船を見たらきっと世界に勝てると思って戦争に突入するだろう。そのようなことをそそる美しい勇ましい船であったのだった。
櫂少佐は、それを恐れていたのだが、出来上がった軍艦に皆が、嬉々として乗り込むなか、櫂は複雑な思いで、一人涙していた。「なぜ泣いておられるのですか?」
一人の海軍兵が、彼に声をかけた。
「私には、この船が日本の国のように思えてならないのだ。」と、ポツリと言うのだった。
そうして第二次大戦は始まり、軍艦は、戦うこともなく、航行中にアメリカの空軍の爆弾と魚雷に沈められたのであった。
結局、櫂少佐も、日本の権力に、騙され、試され、軍艦を作ることに協力してしまった。大きな権力に飲み込まれていった一人の男であった。
戦争時の、恐ろしい怪物のようなうねりの中、人間はほぼほぼ逆らうことも出来ず、ただただ流されてゆくと言うことが分かる映画でもあった。