麻生久美子って知ってた? まあ、見たことはあるっす。
田舎の蔵から沼の砂を干した土砂がいっぱい首も顔も埋まるほど出てきた。
これに水を入れますとすぐに沼ができるから、インスタント沼と言う。
ただそれだけ。いやーひどい暇つぶし。
かっぱを追いかける母さんや、トンチンカンな骨董屋さん。そもそも骨董というのが胡散臭いわ。
でも、主人公は実際のところ父親が居なくて、会いたくて、会いたくて、まともに悩んでいたんだ。
お母さんにも聞けずに居た。お父さんは逃げたらしい。
でも会いたい。そんなきもちが高じてきた頃、偶然に、お母さんが若い頃書いた手紙をみつける。逃げたパパは本当の父親ではない。本当の父は別にいて、どこかで生きていると。
パパは何処にいるのやら。と、尋ねていくと、ヒゲモジャの骨董おじさんだった。お母さんは結婚したが、既に骨董屋との子供を身篭っていた。
彼からいろいろ人生を教わって、自分でも骨董屋を立ち上げる。だが、いつまで経っても、お父さんに私は娘よ、と告白できない主人公。切なさは募ってゆくばかりであった。
娘の開いた店の、黒いものばかり集めた骨董屋は繁盛する。よかったね。わてもまねしたいよ。
パパは骨董に埋もれながら、色んなことを哲学的にかんがえていた。人間観察をする時間もたっぷりもっていた。パンクロックの兄ちゃんと友だちになり、インスタント沼の砂を都会の我が家に運んでもらう。
そんな馬鹿げたことをしている間に、心のわだかまりが溶けていったらしい。
お父さんの骨董屋と娘は、顔を見合わせるのだった。