アランドロンは、現在82歳であり、今も健在だが、仕事は引退すると宣言した。
彼の知人の多くはもうこの世にいない。最後までいたのはミレーユダルクだったが、彼女も近年亡くなった。ナタリードロン、ロミーシュナイダーなど、多くの美人さんに愛された。
彼の言葉で印象的だったのは、「どこに行っても女性にモテてモテて困った。」
ということだった。モテ男は、モテ男としての演技を磨いていったのだった。
だが彼はとても複雑な性格で、役には完璧を期そうとする人間である、とある監督が言っている。
彼の顔やからだから臭う孤独な悲しいような影はどこから来たのかな。
自分は家庭的には決して恵まれていたとは言えないとドロン自ら言っている。
彼は両親が離婚してから、新しい父にもなじめず、軍隊に入り家から離れた。
とに角、家から離れたいという気持ちが止むに止まれず、
ある日突然俳優に起用されて以来、ずっと走り続けて来たのだった。
俳優は彼の心にピッタリしていて、これだ!と思ったそうだ。
この仕事を基にして家から独立できると喜んだ。
少年時代から、スポーツも勉強もできたのに、素行が悪く、放校されたり退学したりの繰り返しだった。
そういうことも、きっと良い肥やしになっているはずだ。
若者たち、山猫、冒険者たち、そして太陽がいっぱい サムライ などたくさんの名画に出ることができた。サムライは孤独な殺し屋のはなしである。とても面白そうだ。
三船と共に、レッドサン(red sun)に出て、日本刀やサムライについて理解が深まったらしい。
どれもそれぞれに特徴があって面白そうだ。
太陽がいっぱいは特に日本で大人気となり、その所以を彼は、「日本は日の出づる国だからだろう。」と言ってくれている。納得だね。
レナウンのCMにも出ていたが
あるスタッフがアランドロンをよぼうといったら、皆が大笑いして、あの大スターが来るわけがないと言ったのだった。
実は三船が、うまくことをすすめてくれたらしい。レッドさんの三船の袴姿は、頼もしく素晴らしいものであった。日本の誇りである。ただこの映画、なぜかつかまえにくく、消えてしまった。
ドロン自身は、子供も数人いるが、離婚をしてしまった。因果は巡るだ。
ブログではダメ映画とくさした「冒険者たち」についても、「皆の演技がとても自然で作り物の感じがしないのがすごいんだ」と言っている。なるほどそういうわけであったか。
地下室のメロディーで共演したジャンギャバンなどは、もう神のような俳優だったと述べている。
色々な監督に認められて、大きく成長していった。彼は孤独だっただろうが、努力も怠らなかったと思う。そうでなければ今まで持つわけない。
其れに彼は やはり幸運の女神に愛された男だったと思う。
努力は辛いこともあるが、彼は努力を自分に課していたと思う。そういう人であった。
ただ、人生努力だけで報われるものでもない。彼の努力好きの真面目さが、彼の暗さを一層深くしているようなそんな欠点にもなるのだ。天真爛漫に華やかな笑顔で場所を潤すというタイプではなさそうだ。
まあ、其れでも彼は彼流のやり方で、船を漕いで来た。其れがやはりよかったのかもしれない。
ドロンは精一杯のお愛想笑いで、日本のインタビューに応えていた。
年月が彼に知恵と柔らかさとまろみを与えていた。
ちょっと着崩した服装もかっこよかった。さすが本場フランスであろうか。