スッポコ谷の楊貴妃

もうすでに還暦女子。すっぽこだにで瘀血と戦ってます。ホテルの換気扇が嫌いすぎて旅行できないのが悩み。

幸福の探求 サミュエル ジョンソン著

やんごとなき生まれの王子ラセラスは、王子の時は、大きな谷の中に閉じ込められていた。

代々の王子はそこで帝王学を学ぶならわしになっていたのだ。多くの家来や学者たちとひとつの村のように暮らしていた。のだが。

だが、王子ラせラスは逃げることを考え続け、広い世界へと乗り出すのだった。

一緒にお伴してきたのは、イムラックという執事であった。経験豊富なイムラックのおかげで、この世の冒険にもひるむことはなかった。

 

王子は従者らといろいろな場所に行くのだが、「この世の見るべきものは見つ」と言うわけで、最終的には、勉学に励むことを決める。

この世の教養を極めるために、世間から引きこもって書物と暮らすと、従者に宣言する。

 

イムラックは進言するのだった。

「そのような人間を私は知っておりますが、そういう人はたいへんなことに

なってしまうのです。」

 

ある天文学者の話をする。

何年も何年も、籠って、天文学の研究に打ち込んだ博士は、とうとう、頭がおかしくなったのだった。

おかしくなり方が、また変わっていた。

太陽も月も、この天体を司っているのは自分自身だと、思うようになっていたのだ。

雨、洪水、干ばつも博士が望めば、その通りになるというのだ。

彼は間違いに気づいておらず、時に愛想よく人をもてなしさえするのだが、心が狂ってしまい、どうしても思い込みが、治らないのだった。

 

イムラックは言う、こうした人間は実は多いのだと。

 

このようにならないためにも、王子には、勉学ばかりに引きこもるのは良くない。むしろ、この現実の世の中で生きて行くようにと、心から忠告するのだった。

 

 

幸福の探求――アビシニアの王子ラセラスの物語 (岩波文庫)