遠野物語とかくと、おっ!物知り、教養者と思われるのではないだろうか。
この話は民俗学者の柳田國男の、面白おかしい人生の暇つぶしというか、お遊びが、教養になったというものだ。
どれもこれも変わった一品揃いであるが、とても短くて、弟のお気に入りのお話がある。
あるところに乙爺さんというのがいて、この爺さんはその地方のことならなんでも知っていた。
深山の伝説やら旧家の伝記やら、家の盛衰やら、地方の歌い継がれた歌などなど、なんでも良く知っていたのだ。
そういうものを、乙爺さんは皆に話したくて話したくてうずうずするのだったが、誰も聴きにくる者がなかった。
なぜなら、それは、爺さんが、臭くて、それで皆が近寄らなかったという理由らしい。
いくら良い話を知っていても、誰も知る事ができないという皮肉な話であった。
この話を弟がいたく気に入って面白がるものだから、わても、読んでみようと思った次第だ。
柳宗悦もそうであったが、聞いたまんまを変な脚色を入れずに書いているというか、その辺りに価値がありそうだ。
一家に一冊あっても良い本だのう、これわ。
桃源に遊ぶというのはこのことであろうか。家にいながら、深山に分け入ったり、神秘の獣などに遭遇できる物語である。そこに住む漁師とも知り合いになれるという事だ。
ただ、現実を忘れて、後でひどい目に会うスッポコであった。